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SDGsとは
最近、テレビ番組や電車の広告でも頻繁に目にするようになった「SDGs(国連持続可能な開発目標)」という単語。「また新たな横文字が出てきた…」と、いぶかしげな視線もありますが、未来の地球を考えていくためにはとても大切なキーワードです。
正式名称と読み方
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取ったもの(最後のsは”Goals”のs)。発音はアルファベットをそのまま、最後はGoalsが複数系のため「エス・ディー・ジーズ」となります。
持続可能な開発目標とは何か
2015年9月に国連で採択されたSDGs。この聞き慣れない言葉を理解するためには、まず「持続可能な開発」の意味を正確にとらえる必要があります。
持続可能な開発とは?
「持続可能な開発(発展)」とは、1987年に国連ブルントラント委員会(通称)で発表された定義が一般的で、これは
将来の世代の人々が自らのニーズを満たす能力を危険にさらすことなく、現状のニーズを満たす発展
というものになります。
ここで、「将来」と「現状」という言葉が具体的に何を指すのか考えてみましょう。
将来世代に影響を与える(犠牲にする)行為とは何でしょう?これは、直接的に言うと環境保全を指します。天然資源を使い果たしてしまったり、分解されないごみを多く廃棄したりすること。すなわち、将来世代の生活環境に悪影響を及ぼさないようにすべきとの考え方です。
次に現代世代について考えてみると、これは、貧困問題を指します。現時点で満たされていない水や食料、健康といった最低限のニーズを満足させていくべきという考え方になります。
そして、持続可能な開発目標は、この環境と開発とを両立して成り立たせていくために地球全体で取り組むべき目標を、17分野に分けて合計169のターゲットとして掲げたものになります。
なお、「環境と開発(発展)」というひとくくりで呼ばれる際の「開発(発展)」は、主に貧困を指すものとしてとらえて構いません。
「開発」と「発展」
SDGsをはじめとして、一般的に「開発」という単語が多く使われるこの分野(開発経済学という学問もある)ですが、「開発」を「発展」と言い換える動きも出ています。
「開発」という単語で想像するのは、”先進国が途上国を開発する”という一方的で押しつけがましいイメージです。これでは途上国の人々が本当に心から豊かさを感じて暮らしているか確信を持つのは難しいでしょう。
一方の「発展」では、”途上国をはじめとする世界各国・地域の人々が自分の力で自発的に望む豊かさを手に入れる”というイメージが想像できます。
持続可能な発展は果たして誰のためにあるのか?誰を幸せにしたいのか?この問いかけに答えるとき、「発展」を選んだ方が適切なことは自明でしょう。
このため、本記事を含めた当サイトにおいては、固有名詞や一般的な使用方法として「持続可能な開発目標」「環境と開発」と使用する場合を除いて「持続可能な発展」の単語を積極的に使用することにしています。
この差は小さいように見えても非常に大切なポイントですので、これから深く学んでいこうと考えている人はぜひ押さえておきましょう。
SDGsによって決められた国際目標
MDGsからSDGsへ
SDGsは、MDGs(Millennium Development Goals:国連ミレニアム開発目標)を引き継ぐ目標という位置付けになっています。
このMDGsは2000年〜2015年の間の国際的な取り組み目標を定めたものですが、2016年〜2030年までの目標を定めたSDGsにそっくりそのまま受け継がれているというわけではなく、大幅な内容の充実が見られています。
課題の範囲の拡大
まず一番の変更点は、社会課題の範囲が大幅に広がったことです。
MDGsでは主に(発展途上国における)開発がメインの目標になっており、一方の環境についての目標が1項目(環境の持続性の確保)しかありませんでした。
SDGsでは気候変動や海洋資源・森林資源をはじめとする環境目標が大幅に追加され、より持続可能な発展(環境と開発の両立)の理念に即した目標体系となりました。
- MDGs:開発が主な目標
- SDGs:環境と開発との間でのバランスの取れた目標
途上国も含めた格差の縮小
次に、格差に対するアプローチの違いが挙げられます。
MDGsでは絶対的貧困※の解消が目標とされ、一定の成果を挙げましたが、一方で世界全体の富の集中や格差の拡大は依然として続いています。
※2019年現在、1日あたり1.90ドル以下(2011年に更新された購買力平価による)で暮らしている人々のこと。
そこでSDGsでは、貧困を最貧国だけのものではなく世界全体の普遍的な課題と認識し、包括的な格差の縮小を達成することで、誰一人取り残さない社会の実現を目指しています。
- MDGs(2000年〜2015年):絶対的貧困の解消が目標
- SDGs(2016年〜2030年):途上国を含めた普遍的な貧困の解消が目標
この他には、幅広いステークホルダーの参画(マルチステークホルダー・プロセス)や、企業が果たすべき役割が強調されるなど、MDGsからSDGsへの移行は、社会課題の解決のためにより実践的な視点で踏み込んだものとなっています。
ロゴで見る17の目標
ここでようやくSDGsのロゴの登場です。カラフルなロゴが17個並んだこのデザインは、これから社会が解決していくべき課題を17の目標として分野別に表したもの。
17個の目標にはそれぞれ合計で169のターゲットが定められており、そのターゲットの達成度を図る具体的な尺度として、232(重複を含めると244)の指標が与えられています。
目標とダーゲット、指標は例えば下記のものになります。このような目標があらゆる社会問題の分野において示されており、企業ごとに取り組むべき課題を特定して事業にあたることが推奨されています。
- 目標の例:貧困をなくそう
- ターゲットの例:あらゆる状態の貧困状態にある全ての年齢の男女、子どもの割合を半減
- 指標の例:各国の貧困ラインを下回って生活している人々の割合
また、SGDsのロゴは国際連合広報センターからダウンロードすることができます。
SDGsアクションプラン
SDGsを推進するために、日本においても国を挙げた取り組みが進んでいます。
2016年に内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が設置され、2018年に「SDGsアクションプラン2019」、2019年6月には「SDGsアクションプラン2019」を具体化した「拡大版SDGsアクションプラン2019」が公開。
このアクションプランでは、
・企業の取り組みの推進
・地方創生の推進
・次世代・女性のエンパワーメント
などを中心として、誰一人取り残さない社会に向けた日本のリーダーシップを示そうとしています。
日本や世界で取り組まれているSDGs
SDGsは国連で採択された国際的な目標ですが、その達成を推進するために民間企業や各種団体も自発的に動き始めています。
自然エネルギー100%プラットフォーム(RE100)
自然エネルギー100%プラットフォーム(RE100)は、使用するエネルギーの全て(100%)を自然エネルギでまかなうことを目標とするイニシアチブです。
P&Gやマイクロソフト、アップルやグーグルなどの世界中の名だたる企業が加盟し、日本からもソニーやイオンなど、18社(2019年7月現在)が加盟しています。
この目標の達成はとてもハードルが高そうに感じますが、例えばアップルでは世界各地の自社施設におけるエネルギーを100%自然エネルギに転換したと発表するなど、実際にこの取り組みは大きな動きを見せています。
世界が向かうべき方向を定めたSDGsは、国や企業、従業員や消費者が同じ目線で課題を把握して行動するための共通言語を示したという意味においても、大変に意義のあるものです。
SDGsの定める期間の2030年までに私たちができることを、まずは身近なところから一つずつ始めていきましょう。