ライフスタイルさまざまな場所で取り組まれるバリアフリー化の事例

さまざまな場所で取り組まれるバリアフリー化の事例

すっかり定着した「バリアフリー」という言葉。駅に行けばエレベータや身体の不自由な人のためのトイレがあり、電車に乗れば車いすスペースもあります。本記事では、バリアフリーの意味とその取り組みの実例を紹介します。

さまざまなバリアフリー化

さまざまなバリアフリー化

普段何気なく過ごしている日常の身の回りにおいては、多くのバリアフリー化が行われています。その例を見てみましょう。

建築物のバリアフリー化

高齢の利用者が増えたため、デパートなど公共施設のバリアフリー化が進められています。例としては、

  • 外につながる出入り口に段差ができないように、スロープなどを設ける
  • 車椅子が回転できる場所を確保するために、廊下や出入り口の幅を広くする
  • 2階へ簡単に上がれるように、エレベーターや階段昇降機を設置する
  • 車椅子でも使いやすいように、トイレや洗面所に手すりを用意する

などが挙げられます。

駅のバリアフリー設備

車椅子利用者など足の不自由な人のためのバリアフリー設備には、エレベーターやスロープなどが挙げられます。また、車椅子でも簡単に通れるように自動改札の一部のスペースを広く設けている場所もあります。

目の不自由な人のためのバリアフリー設備には、床面の誘導ブロックや運賃表や案内板への点字の導入などが挙げられます。

ノンステップバスの導入

ノンステップバスとは、路面とバスとの間の段差を限りなく少なくすることで、ノンステップ(0歩)で乗り降りを可能にしたバスのことです。「人と環境にやさしいバス」をコンセプトに、誰もが使いやすいバスとして注目を集めています。

ノンステップバスの導入によって、

  • 段差が少ないため、高齢の人でもスロープを利用すれば介助なしで乗り降りが可能
  • バス内の段差も限りなく少なく設計されているため、走行中も安全
  • ニーリング装置」により車椅子利用者の介助なしでの乗り降りが可能

といった効果が期待できます。

ニーリング装置
降りる際に車体を傾け、さらに地面との隙間をなくす装置

バリアフリーマップ

このようなバリアフリー設備が充実した設備がどこにあるのかを簡単に確認できる手段として「バリアフリーマップ」というものがあります。

都道府県や市町村が独自に作成しており、その県や町においてバリアフリー設備が整っているデパートやホテル・飲食店などを検索できたり現在のバリアフリー化の状況が確認できるようになっています。

建築物におけるバリアフリー化から道路・歩道、交通機関まで、日常的に利用するさまざまな施設における取り組みが進められています。

 

バリアフリー新法

バリアフリー新法

バリアフリー新法とは

2006年12月、それまでのハートビル法と交通バリアフリー法を統合・拡充した新しい法律である「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が施行されました。

通称「バリアフリー新法」と呼ばれるこの法律が生まれた背景は、それまでにあった法律によって個別の施設でのバリアフリー化は進められていたものの、連続的・面的なバリアフリー化が進展していなかったことや、ソフト面での対策が不十分であったことでした。

バリアフリー新法の目的は、高齢者や全ての障がい者、妊婦、けが人といった、何らかの不自由を抱えている人びとの利便性や安全性を向上させることです。

そのため、以前の法律ではバリアフリー化の対象となっていなかった駐車場や都市公園においてもバリアフリー化が求められるようになりました。また、鉄道駅を中心とした地区、高齢者、障がい者などが利用する施設が集中する地区における面的なバリアフリー化も促進されました。

「心のバリアフリー」の取り組み

高齢者や障がい者が安心して日常生活や社会生活を営むためには、バリアフリーの施設整備だけでは足りません。若い人や障がいのない人が高齢者や障がい者の感じる大変さを知り、自分の問題として対策にも積極的に取り組む「心のバリアフリー」が重要です。

施設における各種のバリアフリー化がハード面の整備であるならば、心のバリアフリーはソフト面での重要な取り組みと言えるでしょう。

心のバリアフリーを推進するため、国や地方自治体、学校やボランティア団体などの各種団体が「バリアフリー教室」を開催しています。この教室では、高齢者や障がい者の疑似体験や介助体験をすることで身体の不自由な人の困難な状態を知り、バリアフリー化への理解を深めるきっかけを得ることができます。

バリアフリー法に基づく取り組み状況

バリアフリー法の施行以降、公共施設などのさまざまな施設においてバリアフリー化の取り組みが加速しています。

特に、利用者の多い交通機関ではさまざまな取り組みが積極的に進められています。

旅客施設(一日当たりの平均利用者数3,000人以上、2016年度末時点)

  • 視覚障がい者誘導用ブロックの設置:93.8%
  • 段差の解消:87.2%
  • 障がい者用トイレの設置:84.2%

車両などのバリアフリー化(2016年度末時点)

  • 鉄軌道車両:67.5%
  • ノンステップバス:53.5%
  • 旅客船:40.3%
  • 航空機:97.1%

 

バリアフリーに対応したおすすめの温泉宿

バリアフリーに対応したおすすめの温泉宿

身体も心も癒やしてくれる温泉。しかし、古くからある趣深い温泉宿の多くは、階段があったり通路が狭かったりと、高齢者や障がい者には利用しづらいというイメージがあります。

公共施設でバリアフリー化が進められているのと同じように、温泉宿においても車いすや介助が必要な場合にも利用しやすいバリアフリーの温泉宿が増えてきています。そこで、バリアフリーを積極的に取り入れている温泉宿を三つ紹介します。

ザ レイクビュー TOYA 乃の風リゾート

北海道南西部に位置する洞爺湖温泉は、火山が造り出したカルデラ湖の湖岸に立地する、雄大な自然の中にある温泉郷です。

湖畔に立地する「ザ レイクビュー TOYA 乃の風リゾート」は、全室レイクビューの客室を擁し、洞爺湖の絶景に包まれるようにして過ごすことができます。

バリアフリーにも力を入れており、バリアフリーツインルームを三室用意しています。この部屋は段差がなく車いすのまま入室でき、手すりが付いた洗面所、トイレ、バスルームを備えています。客室の広さは56平方メートルと広々しており、介助する人も一緒にくつろぐことが可能です。

バリアフリーツインルーム以外の客室も全般的に平坦なフローリングで段差が少なく、車いすのまま利用できる構造。また、館内の食事会場につながる通路にもスロープが設けられており、車いすの人が利用しやすい配慮がなされています。

箱根湯本温泉 ホテルはつはな

神奈川県箱根町の湯本温泉は、四季を通じて多くの行楽客でにぎわっています。「小田急 ホテルはつはな」は湯本温泉街の最も奥に位置し、とても静かで良好な環境が保たれています。

渓谷の斜面に立地していることから館内には高低差があるものの、各所にスロープが設けられています。

ポイント
大浴場へは専用のスロープカーが設置されており、足の不自由な人でも容易に温泉を楽しめるよう配慮されている。

さらに、車いすでの利用に配慮したバリアフリー客室も用意されています。車いすのままバスルームへ移動し、楽に湯船に浸かることができる構造となっています。

箱根といえば箱根細工に代表される木工製品が有名ですが、その箱根らしい独特な木製の車いすが貸し出し用として用意されているのも特徴です。

洲本温泉「ホテルニューアワジ別亭 淡路夢泉景」

洲本温泉は、瀬戸内海に浮かぶ淡路島の東岸に立地しています。「ホテルニューアワジ」は洲本温泉に複数の宿泊施設を運営するホテルであり、風光明媚な瀬戸内海を眺めながら温泉を楽しむことができます。

「ホテルニューアワジ別亭 淡路夢泉景」は、ロビーや館内施設においてできるだけバリアフリーを意識し、高齢者や妊婦、小さい子連れの客を含む全ての人が安心して快適に過ごせる宿泊施設づくりに取り組んでいます。

また、貸し切りの家族風呂にはホテルとしては珍しい「スライドイン入浴システム」が設けられています。この設備を利用すると、スライド式のシャワーチェアーに乗って浴槽の上まで移動し、その後にチェアーが浴槽まで下りることで、人が介助することなく温泉に浸かることができます。浴槽への上り下りをせずに温泉を楽しむことができる設備です。

 

私たちが生活している環境には、さまざまな障壁がたくさんあります。身体に不自由なところがないと、つい身体の不自由な人が直面している困難を忘れてしまいがちです。障がいがある人も、ない人も同じように生活できる、そのような社会づくりにぜひ取り組んでいきましょう。