自然第一次産業として発展を続ける「林業」の仕事内容・平均年収と今後の課題

第一次産業として発展を続ける「林業」の仕事内容・平均年収と今後の課題

高度成長期を境に下降の一途を辿っていた日本の林業。その形態が見直され、新たな取り組みが行われることで再び注目を集めています。林業の仕事内容と気になる平均年収についてのお話です。

林業の仕事内容

林業の仕事内容

自然と上手く付き合いながら進められている林業ですが、その仕事内容はどのようなものなのでしょうか。一つずつ見ていきましょう。

苗木作り

日本の林業は種子を直接山にまくのではなく、苗を育てるための畑(苗場)で1年〜3年ほどの時間をかけて苗木を育て、それを山に植栽(植え付け作業)をします。日本では主に

  • スギ
  • ヒノキ
  • カラマツ

といった種類が用いられます。

地ごしらえ

伐採作業が完了した場所に残っている、刈り払われた枝や低木・雑草をまとめて整理する作業のことを「地ごしらえ」と言います。

これは、

  • 新しく苗木を植栽する場所の確保
  • 苗木植栽後の下刈りの短縮
  • 伐採後の土壌の乾燥を防ぐ

などの意味を持ちます。

また、代表的な地ごしらえの種類は以下のとおりです。

全刈り地ごしらえ

植栽予定の場所に残された全ての枝・低木・雑草を取り除く方法

筋刈り地ごしらえ

植栽を予定している列部分のみの枝・低木・雑草を取り除く方法

坪刈り地ごしらえ

植栽を予定している場所に沿って枝・低木・雑草を円形に刈り払う方法

枝条撒布地ごしらえ

刈り払われた枝・低木・雑草を植栽予定の場所にまき散らす方法

棚積み地ごしらえ

刈り払われた枝・低木・雑草を植栽予定の場所に等間隔で棚のように積み上げていく方法

火入れ地ごしらえ

刈り払われた枝・低木・雑草をまとめて燃やし、植栽予定地を更地にする方法

先行地ごしらえ

伐採作業前に、刈り払い・除去作業を終わらせておく方法

植栽

苗場で育てた苗木を植えていく作業を植栽と言います。時期はあまり暑くない季節が良いと言われており、春や秋に行われるのが一般的です。苗木の生存競争の力を利用するため、ある程度密集させて植栽していきます。

下刈り(下草刈り)

苗木の成長を良くするため、周りに生えてくる雑草を取り除いていく作業です。どれだけきちんと地ごしらえをしていたとしても、時間がたてば必ず雑草と雑木は生えてきてしまいます。

畑の作物と同様、苗木も雑草に埋もれると成長が妨げられます。これを防ぐために、年に一度から二度ほど、一本一本の苗木の下に生えた雑草を刈り取る作業が必要となるのです。

MEMO
育成状態によっては肥料をまくこともあります

つる切り

苗木が大きくなると雑草が苗木に巻きつくように成長していきます。雑草に負けないほど育った苗木も、つるが巻きついたままでは成長を妨げられてしまうため、これを丁寧に刈っていく必要があるのです。この作業を「つる切り」と呼びます。

除伐(じょばつ)

スギなど成長の早い樹木は、植栽してから10年ほどで高さが5mを超えます。このころになると、密集させて植栽した木のなかでも、

  • 成長が止まった木
  • 自然災害により曲がって育った木

などがほかの木の成長を妨げるようになります。

「除伐」とは、このような邪魔になる木を切って取り除く作業です。売り物を育てる以外にも、森林を正常化するうえで重要な役割を担う作業となります。

枝打ち

成長した木は徐々に枝葉を広げていきますが、これをそのままにしておくと日光が届きにくくなり、森林が暗く湿って害虫が湧きやすくなります。このような状態を防ぐために行われるのが「枝打ち」です。

この作業は樹木の成長が止まる秋から冬にかけて行われ、枝打ちされた樹木はより良質な木材となります。

間伐(かんばつ)

順調に成長した木も、20年、30年とたつうちに混み合った状態になってきます。それを放置しておくと木は弱くなってしまうため、「間伐」と呼ばれる間引き作業を行って環境を整えます。

間伐は木をより強く育てるほか、森林の動植物の営みを支えるためにも必要な作業です。

間伐の期間
だいたい5年周期で行われ、その都度10%~25%もの木々が伐採される

主伐(しゅばつ)

植栽後50年ほどで、スギは立派な木材となります。地域によっては100年かけてより高品質な木材を作り出しますが、おおむね木材として十分な大きさになった木は伐採されていきます。

この作業のことを「主伐」と呼び、

  • 一定区画を一気に伐採する方法
  • 部分的に伐採して苗木を植えながら世代交代をしていく方法

の2つがあります。

玉切り

伐採された木を利用しやすい長さに切り整え、丸太に仕上げる作業です。

このような一連の作業を経た木は丸太の状態で搬出・運搬されていきます。ケーブルなどで吊るして林道まで降ろされた丸太はトラックに積み込まれ、原木市場や貯木場へと運ばれていくのです。

 

林業の気になる年収

林業の気になる年収

大自然の中に身を置いて仕事をする林業は、日本の発展のためには欠かせない職業です。しかしその一方で、年収が低いという問題も抱えています。では実際、林業に携わる人はどれくらいの給料を受け取っているのでしょうか。

平均年収はどれくらい?

明確な情報は出ていませんが、林業を含む農林水産業の平均年収はだいたい310万円だと言われています。なかには300万円を切っているという人も多く、日本の2017年時点での平均年収418万円と比較しても相当低いのが現状です。

かなりの体力を必要とし、作業に危険がともなう職業としてはとても低い金額のため、若者の就職率は減り続け高齢化が進んでいます。

 

林業の現状と課題

林業の現状と課題

生産性と経営力の向上

日本国内での林業を活性化させるために必要なことは、

  • 安定した生産力
  • それを支える経営力

の向上です。

これまでの林業は、個人の林家や各企業・団体が保有している森林をそれぞれに経営していくスタイルでした。しかし、このままでは需要と供給にばらつきが出るだけでなく、安価で手に入る外国産の木材に押されてしまい、国産木材の活性化にはつながりません。

大きなまとまりとして林業を向上させて経営していくことで、外国産にも負けない日本の木材を安定して生産していく形が求められているのです。

林業の経営

林業の経営において一番の問題となるのは、経営を続ける能力を安定させることです。個別林業のスタイルを集約させて森林組合などの団体を作ることで、大口の注文にも耐えられる人員を確保し、国産木材の流通を図ります。

森林の各保有者が納得したうえでこれらの団体に所属し、各森林の育成具合や提供できる木材の情報を一箇所に集約して経営をすると、それまで個別に所持していた情報がオープンになり、より良い方法で樹木を育成して供給できるシステムが組み上がることになるのです。

人材の育成と確保

実際に林業を行うには、それにふさわしい能力を身につけた人材を確保する必要があります。そのためには、地域によって違う育成指導を近隣の団体で一つの技能としてまとめ上げ、一定した技能指導を行って後継者を育成しやすい環境を作ることが不可欠です。

山村の振興

森林近辺の地域では、林業の衰退から後継者不足が加速して限界集落にまで問題が発展しているもあります。里山と呼ばれる森林を守ることは、大雨による土砂災害から人々の生活を守り、自然の営みを継続させていくことにもつながります。

MEMO
林業により山村を活性化させることは、経営だけでなく自然の保護と保全をするうえでも大きな意味合いがある
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林業での事故に気を付ける

従事するにあたり特殊な技能を必要とする林業ですが、残念ながら現在では後継者が不足し高齢化が進んでいます。その背景の一つが「仕事上の危険性」です。

林野庁の資料によると、2016年の死傷者は1561人。そのうち死亡した人は41人となっています。推移としては右肩下がりに見えるのですが、林業従事者自体が減少しているため、死傷者数の割合にはあまり変化がないとも推測されます。

死亡理由として最も多いのは木を切り倒す時で、亡くなられた人の年齢で多いのは60才以上のベテランです。

足元の安定しない山中で人間の何倍も重く大きい木を切り倒すという作業は、それだけ危険で気を抜けません。さらに、作業を効率よく進めるための大型機械の操作ミスや険しい山で続く仕事は、常に危険がともなうのです。

 

林業は、いわば自然を相手にした大きな事業。共存共栄を目指した、より安全で安定した林業の形を作るための努力が始まっています。