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生活習慣病とは
病気には「感染性」と「非感染性」があり、薬剤やワクチンの発達によって細菌・ウィルスによる感染性の病の多くは克服され、長寿社会(高齢化社会)となっています。一方、増加しているのが生活習慣関連性の病です。
生活習慣病の定義
個々の生活習慣に原因があるとされる病気のことを「生活習慣病」と呼び、糖尿病・高血圧症・肥満症などを指します。
加齢とともに発症率が上がるため以前はこれらを総称して「成人病」と呼んでいましたが、「生活習慣を改善することで予防できる」という意味を込めて「生活習慣関連性疾患」=「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。
また、これらの病気が進行すると
- 心筋梗塞・脳卒中などの循環器疾患
- 肝硬変・脂肪肝などの肝疾患
- がん
などへと発展するリスクは高まっていきます。
生活習慣病は、一度発症してしまうと予後不良となってしまう可能性が高いため、予防・対策はとても重要です。
そのためには、
- 規則正しい生活リズム
- 栄養バランスがしっかり取れた食事
- 適切な運動
- 定期的なストレス発散
など、健康的にも精神的にも健全な生活を送るようにしましょう。
代表的な生活習慣病の種類と症状
糖尿病
インスリンの量や働きが低下し、血液中のブドウ糖濃度が高くなる病気です。初期の段階には自覚症状がなく、重症化すると網膜症・腎症・神経障害などの合併症が現れ、以前は命を落とすこともありました。
細胞がエネルギー源である糖を取り込めなくなるため、
- すぐ疲れるようになった
- 手足の感覚がない
- 免疫力が低下し、風邪をひきやすくなった
- 目がかすむ
などの症状が出ることがありますので、少しでも違和感を感じたら病院でしっかりと検査をしましょう。
高血圧症
何度測っても血圧が異常に高くなっている病態のことを指します。高血圧の状態がずっと続くと血管は常に張り詰めた状態が続き、動脈硬化の原因となります。
また、動脈硬化を放置していると、
- 脳梗塞
- 大動脈瘤(りゅう)
- 心筋梗塞
- 眼底出血
につながる恐れもあります。
高脂血症
コレステロールや中性脂肪が異常に増えている状態です。主に、食べ過ぎ・飲み過ぎ・運動不足・たばこによって起こりますが、1%程度ではあるものの遺伝的要因で起こる人もいます。
こちらも動脈硬化の原因となる病で、放っておくと心筋梗塞や急性膵炎(すいえん)を引き起こすこともあります。
高尿酸血症
体内の尿酸量が多く、排泄が間に合わないために血液中濃度が7mg/デシリットル以上になった状態です。放っておくと痛風の症状が起こります。以前は「贅沢病」と言われ、美食家に多い病とされていました。
食事からの摂取やエネルギーを使った後の副産物としてのプリン体が尿酸に分解され、その量が多いかまたは排泄能力が低下していると起こります。
メタボ(肥満症)
体の中に体脂肪が過剰に蓄積された状態です。BMI値22が適正体重で25以上になると肥満と定義され、高血圧・糖尿病・高脂血症の原因になります。
適正なBMI値は個人によっても違いますが、年齢別に見た目標BMIは、
- 18歳~49歳で18.5~24.9
- 50歳~69歳で20.0~24.9
- 70歳以上で21.5~24.9
です。
脳血管疾患(脳卒中)
脳の血管の障害で、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血を引き起こす病気です。起こると脳内のブドウ糖が不足して神経細胞が破壊され、後遺症や寝たきりの原因となります。
医学の進歩によって死亡者の数は減ってきているものの、超高齢化社会の進行によって患者数自体は年々増加しています。
心疾患
心臓に酸素や栄養素を運んでいる冠状動脈にコレステロールがたまり血液が流れにくくなることで起こる病気です。
心臓に負担がかかると一時的に胸が痛くなるなどの症状が起こりますが、15分ほどで治まってしまいます。痛む場所は人によって異なり、心臓のあたり・胃の上あたり・顎がだるいといった場合まであります。これが重症化すると心筋梗塞を起こす大変に危険な病です。
がん
日本人の死因の第一位であるがん。いまだに明確な治療法がなく、予防が頼りの病気です。発生する部位によって、肺がん・胃がん・大腸がんなどの名称で分類されます。
生活習慣病に陥る原因
喫煙・飲酒・運動不足といった生活習慣は、健康に良くないことは知っているものの、どの程度で病になるのか正しい知識がないために何となく続けてしまいます。なかでも喫煙は肥満や心疾患・脳血管疾患とも関係があり、万病のもとになっています。
これら生活習慣の害を正しく認識し、改善の一歩を踏み出しましょう。
喫煙
「世界禁煙デー」が定められるほど注目される喫煙は、受動喫煙の問題も指摘されており、喫煙者だけの問題にとどまりません。喫煙は肺がんに代表されるタバコ病を発症させると考えられています。
偏食
偏食はエネルギー摂取量の調整を難しくするため、適正体重を保てなくします。そして、体重管理が困難になると高血圧・高血糖・脂質異常などの生活習慣病の原因になってしまいます。
例えば、エネルギーの摂取はタンパク質・脂質・炭水化物から行いますが、タンパク質は不足すると脳卒中の発症率を引き上げ、取り過ぎると糖尿病のリスクを増加させます。
また、脂質は多く摂ると動脈硬化症・肥満・糖尿病のリスクが高まりますが、少ないとエネルギー不足になり体が活動できません。
栄養バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。
飲酒
飲酒は、アルコールの分解を担当する肝臓への負担を増大させ、負担をかけ続けると脂肪肝や肝炎を引き起こす原因となります。
また、生涯の飲酒総量に比例して脳の萎縮が進むことも分かっていますが、加齢により自然に起きる現象のため、適量を守ればそれほど心配する必要はないともされています。
ストレス
個人を取り巻く外界の変化とそれを受けて体に起こる反応をストレスと呼びますが、過度のストレス状態は
- 心の健康を害して「生活の質」を低下させる
- 感染症にかかりやすくなる
など、心身症と呼ばれる症状を引き起こします。
心の健康を保つにはストレスと上手に付き合っていくことが必要になりますが、ストレスが全くないと脳や体への刺激がなくなり、かえって不安になることもあります。
運動不足
適度な運動を行うとタンパク質は成長に利用されますが、不活発な状態や激しい運動ではタンパク質の分解が促進され、タンパク質不足が起こります。
厚生労働省のデータでリスク要因別死亡者数で喫煙・高血圧に次いで運動不足が第3位となっていることからも分かるように、運動量による体内の栄養バランス変化に気を配ることが大切です。
睡眠不足
睡眠の量や質が低下すると、心身の回復が十分に得られず、心の健康を害したり日中の眠気による事故を引き起こしたりします。睡眠不足の状態が長く続くと高血圧・糖尿病・脳卒中や心疾患のリスクも高まるため、放置はできません。
日本の成人の平均睡眠時間は6時間~8時間とされていますが、季節変動や健康な人でも加齢により睡眠時間は減少していくため、時間数だけにこだわらず、目覚めの良さや日中の眠気を観察して自分のベストな睡眠時間を見つけましょう。
生活習慣病の予防策
生活習慣病の予防策は生活習慣の改善が第一になりますが、そのためには健康でいる目的を持つことが必要です。「のんびり過ごしたい」、「社会のために働きたい」、「おいしく食事を摂りたい」などの単純なもので良いので、なぜ健康でいたいのかを自覚することが努力の推進力となるでしょう。
一無・二少・三多で生活習慣病を予防する
「一無:無煙」は禁煙、「二少:少酒・小食」は飲酒と食事を少なく、「三多:多動・多休・多接」は運動・休養・社会との接触を多くすることを表した言葉です。
一無:無煙
心臓・血管・肺に負担をかけて心疾患・脳梗塞・メタボなどの生活習慣病を引き起こすたばこは、健康を考えるのならば吸ってはいけません。
二少:少酒・小食
「医食同源」の言葉のとおり、生活習慣のなかで最も大切なのが食生活です。食事量は腹八分目、お酒は純アルコール量で一日20gまでにします。
三多:多動・多休・多接
我慢するだけでは健康を手に入れることはできません。運動・睡眠・社会活動を生活に積極的に取り入れて心の健康を獲得することで、体の健康もついてきます。
生活習慣病予防の例
喫煙習慣の改善
ヘロイン・コカインなどと同等の依存性を持つたばこは、一度習慣化してしまうと本人の努力だけで止めることは困難です。そのため、禁煙にはノウハウを持った医師による「状況把握」とサポート薬による「支援」、そして家族や周囲の人による「声かけ」の協力が必要になります。
辛い最初の3日間を乗り切り、3週間禁煙することができれば成功です。医師のフォローアップを受け、段階ごとに成果を確認しながら禁煙しましょう。
栄養バランスの改善
食事により摂取する栄養素を、厚生労働省の定めた「食事摂取基準」の目標量に達するようにすることで生活習慣病を予防できるます。
- 成人のエネルギー摂取量は、脂質・タンパク質・炭水化物を合わせて男性で2000~2800kcal/日、女性で1700~2400kcal/日とする
- タンパク質の推奨量は0.81g/kg体重/日。ただし、タンパク質の過剰摂取は糖尿病・心疾患・がんの発症リスクを増加させるため、摂取エネルギー量の20%程度にする
脂質の推奨量は摂取エネルギー量の20%以上が良いとされています。脂質はエネルギー密度が高いので少ないとエネルギー不足になり、タンパク質の過剰摂取につながってしまうからです。これに加えて、その他必須アミノ酸などの栄養素もバランス良く摂取することが必要です。
酒量の制限
休肝日を作り、飲酒量を減らしましょう。
日本酒の場合は一日1合~2合が適量で、1合だと死亡率が0.6%下がり、3合だと0.6%上がるとされています。週に1回、2日間連続の休肝日を設けるとベスト。適量は純アルコール20g(ビール中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯、焼酎0.5合、ワイン2杯)です(厚生労働省 生活習慣病対策室資料による数値)。
ストレスとの付き合い方
ストレスをなくそうと考えてはいけません。ストレスがあるから努力でき、ストレスがあることによって危険から身を守ることができるためです。したがって、ストレスと上手に付き合う努力が必要であり、これをストレスマネジメントと言います。これには、交感神経を抑えてストレスホルモン濃度を低下させる・緊張感を緩和させて血圧を低下させる効果がある森林浴をするのがおすすめです。
運動不足には軽運動
急激な運動はかえって体に負担をかけるため、生活習慣病の予防にはウォーキングなどの軽運動が適切です。歩くだけの運動は単調で長続きしないという人には太極拳やヨガも人気です。
睡眠不足には体内時計の調整
睡眠不足の原因はさまざまですが、その多くは体内時計の乱れにあります。朝食をしっかり摂ることで「朝」の時間を体に認識させてリセットし、夜間のスマートフォン利用などの体内時計を乱す行動もできるだけ控えましょう。
喫煙・飲酒・食べ過ぎが体に悪いのは誰もが知っていますが、心配だけではかえってストレスがたまり不健康になってしまいます。生活習慣について、具体的にどの程度悪いのかを知ることで過度の不安を取り、安心して暮らすことも必要です。
また、健康長寿には運動不足・睡眠不足の解消と同じく積極的な社会参加も大切。周囲の人と声を掛け合って社会的健康を作っていきましょう。