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小樽の歴史ある工芸品「小樽ガラス」
小樽ガラスの歴史
小樽ガラス発展のルーツは「石油ランプ」と「浮き玉」です。小樽におけるガラス製造は、1891年に井上寅蔵が小樽でガラス工場を開いたことに始まります。
ガラス工場では、ガラスくずを使用してランプを覆う筒のほか、瓶や金魚鉢などの家庭用雑器が生産され、ガラス製品の製造が発展していきます。当時、北海道の家庭のあかりは電気ではなくガラス製の石油ランプが主流だったため、小樽ではガラス製のランプの製造が盛んに行われていました。
さらに、大正に入ると、港町の小樽では北洋漁業、なかでもニシン漁が盛んに行われるようになります。ニシン漁ではガラス製の浮き玉を使用して漁を行うため、その需要も急増して生産が盛んになりました。
石油ランプと浮き玉。これら二つのガラス工業が盛んだったことが、小樽ガラスのルーツと言えます。
ガラスの街としての「小樽」
明治時代に北海道開拓の玄関口として流通の要だった小樽は、湾岸の整備が進められて港町として栄えていました。また、木造石造倉庫が立ち並ぶ国際的な貿易港としても発展していきます。
昭和に入ると、小樽は「ガラスの街」として全国的に知れ渡るようになります。きっかけは、これまでの実用的なガラス製品を見直し、工芸品としての価値を高める製品を生み出したことです。
1901年創業の北一硝子がガラス製の石油ランプを観光客に土産物として販売したことで、人気は一気に広がります。その後も色やデザインにこだわり、安らぎや温かさを感じるガラス工芸品が数多く生まれました。
同時に多くのガラス作家も誕生し、道具としてではなく花瓶やグラスなどの食器類として生まれ変わり、ガラスの街として成長していったのです。小樽市内には個性的な作品や土産物のガラスなどを製造・販売する店舗が60以上あり、ガラス文化とブランドを下支えしています。
小樽ガラスの特徴
斬新なデザインの商品がたくさん
小樽ガラスの特徴の一つとして挙げられるのは、ガラスに色を付けた色鮮やかなものがあるだけでなく、容器にどどまらないストラップやピアスなど、おしゃれで斬新なデザインの商品も多く存在することです。
こういったかわいらしさが、小樽ガラスが観光客を中心に人気になり、全国的にも有名になった理由の一つとして考えられるでしょう。
一つ一つが手作りの温かみ
上述したアクセサリーなどの中の一部を除いて、一般的に小樽ガラスは吹きガラスの手法によって手作りで行われます。小樽ガラスの職人として十分な技術を身につけるには約10年を要するほど精密な作業で、一つたりとも同じものは生まれません。会社によっては、購入したい商品と同じ商品を複数用意し、その中からお客さまに好みのものを選んでもらう場合もあるほど。
こうやって購入した小樽ガラスには愛着が湧いて、長く愛用できそうですね。
小樽ガラスの魅力あふれる商品
北一硝子 スインググラス 氷の華 クリア色
北一硝子は、小樽をガラス製造と観光の町として全国区に広めた老舗企業です。1901年、前身の浅原硝子が石油ランプや漁業用浮き玉の製造を開始し、1971年に北一硝子に社名変更。業務用のガラス製品を観光客に販売したことから人気となりました。
また、明治中期に建てられた木造石造の倉庫を再利用した「北一硝子三号館」は、旧倉庫を再生した最初の成功例。小樽の古い街並みを残す役割を果たし、小樽観光の拠点となりました。1991年、北一硝子三号館は小樽市歴史的建造物に指定されています。
北一硝子で製造された「スインググラス 氷の華」は、ゆらゆらとスイングするグラスです。ガラスの表面にはアイスクラック技法による繊細な細工が施されてあります。傾けても倒れることなく起き上がることから、縁起の良いグラスとしてプレゼントやブライダルギフトとしても人気の商品です。
ガラス ゆらりタンブラー 作家「原光弘」
ガラス作家である原光弘の作品は、厚みがあって冷たく感じがちなガラスに温もりを感じさせてくれることが特徴です。
「ガラス ゆらりタンブラー」は、一つひとつ丁寧な手作業で作られた大きめのグラスです。大胆な歪みと波のように滑らかな曲線は、口触りが良く手にも馴染みます。手作りのため形状はそれぞれ異なり、光の屈折で飲み物とグラスをより美しく魅せます。
硝屋 手作り ガラスストラップ
ガラス工房の硝屋は、ガラスアクセサリーやミニチュアオーナメントの製造・販売を行う会社です。店舗ではオリジナルのガラスアクセサリー作りを楽しむことができます。
好みの色のガラス棒を選び、バーナーの熱で溶かしながら心棒に巻きつけて作る「とんぼ玉」、または板ガラスを使用したガラス細工でカッティングしながらパーツを作り並べてデザインする「フェージング」、どちらかの方法での製作体験ができます。
幸愛硝子 ガラスピアス Sanctuary
幸愛硝子は「愛と幸せを運ぶ手作りガラス」をコンセプトに小樽で設立された吹きガラス工房です。工房と併設のギャラリーは予約制で、展示されているガラスアクセサリーやグラスウェアから好みのものを選ぶことができます。
ガラスピアスのSanctuaryは、神秘的な洞窟の奥の泉を彷彿とさせるような碧色(強い青緑色)が特徴のアクセサリー。吹きガラスの製法ではめずらしい小さなピアスは手間をかけた手作りのため、同じものは二つとないと言われています。
小樽ガラスの魅力を伝える取り組み
小樽雪あかりの路
「小樽雪あかりの路」は、1999年2月に市民の有志により始まったイベントです。夕暮れから夜にかけて、約12万本ものローソクのあかりを小樽の町に灯して古い街並みを優しく照らす幻想的なイベントで、小樽市全体がローソクのあかりに包まれます。
「小樽雪明りの路」というイベント名は、北海道出身の小説家伊藤聖が執筆した、雪が降る町で織りなされる恋愛模様を描いた詩集「雪明りの路」に由来します。
小樽市の観光振興を目的に毎年2月に開催され、10日間のイベント期間中は50万人前後の来場者であふれる、冬の北海道を代表する風物詩です。
イベントコンセプト
小樽雪あかりの路のイベントコンセプトは、ローソクの灯火一つひとつに「手づくり」の温かさを感じられること、また、人のぬくもりや時代が変わっても不変なものを大切にすることです。
「参加型」「手作り」にこだわったイベントは、開催ごとに感動の輪を広げ、第10回ふるさとイベント大賞では北海道初の「総理大臣表彰」を受賞しています。
期間中にはさまざまなオフィシャルイベントがあり、雪のオブジェ作りやワックスボウルの製作体験、バックヤードをめぐるガイド付きツアー、ライブイベントなども充実しています。
ボランティア
市民による「参加型」にこだわっていることから欠かせないのがボランティアの存在です。ボランティアスタッフは、イベントが始まる17時に合わせて雪のローソクに火を灯していきます。
また、イベントの最中には風で消えたローソクの交換の見回りや観光客への案内・調査などを行います。そのほかには雪のローソクやオブジェを作る楽しい作業も多くあり、毎年幅広い年齢層のボランティアが参加し、イベントの成功を支えています。
小樽がらす市
「小樽がらす市」は北海道最古の鉄路が残る「急国鉄手宮線」で行われる野外イベントで、毎年7月の「おたる湖まつり」の時期に実施されます。
小樽市内のガラス工房のほか全国のガラス職人が集結し、個性あふれる作品の展示販売を中心にさまざまなイベントが充実しています。また、小樽雪あかりの路の期間中にも「冬の小樽がらす市」として小樽運河プラザ内で開催されています。
イベント内容
ガラス製品の展示販売のほかにグラスデザインコンテストも毎回開催されており、小樽市民からグラスのデザインを募集しています。受賞作品は、小樽市内のガラス工房の職人により実際に造形された後にプレゼントされます。
また、青空ガラス工房では、移動窯を利用した屋外でのガラス作家による吹きガラスのデモンストレーションや吹きガラスによるグラス製作体験などができます。
小樽ビール協賛のビールグラスコンテストでは、「おいしく飲めるグラス」をテーマにガラス作家が造形したグラスから来場者の投票によってグランプリを決定するイベントも実施されています。
小樽ガラスは、港町としての発展とともに歩んできました。実用的なガラス製品だった小樽ガラスは工芸品へと発展し、町の魅力発信にも大きく貢献しています。レトロな雰囲気を残す小樽で、歴史を感じながら美しい小樽ガラスを手にしてみてはいかがでしょうか。