歴史ある日本の伝統工芸波佐見焼の特徴とは?魅力や歴史を深掘り!

おしゃれで可愛い「波佐見焼」 日常的に使えるおすすめのブランド5選!

伝統的でありながら、モダンなデザインや時代に即した実用的でカラフルな可愛らしい色合いが特徴的な波佐見焼。丈夫で長持ちなうえ、手に取りやすい価格なのも魅力的で、日常的に使える器として注目を集めています。そこで今回は、そんな波佐見焼について歴史も交えながら紹介していきたいと思います。

波佐見焼の特徴

波佐見焼の特徴

波佐見焼とは

波佐見焼は、長崎県の中央北部にある東彼杵郡波佐見町一帯で作られている磁器です。磁器の特徴でもある透明感が美しい乳白色の素地「白磁(はくじ)」に、「呉須(ごす)」という藍色の顔料で施された繊細な絵付が特徴です。

波佐見町は磁器の生産が非常に盛んで、日用食器の全国シェアはなんと15%前後。そのため、町民の2〜3割程度が波佐見焼に関連する仕事をしているほどです。

波佐見焼の歴史

波佐見焼は1599年(慶長4年)に誕生しました。その前年に朝鮮から来た陶工が波佐見町の3つの土地に連房式階段状登窯を作り、焼き物を始めました。始めのころは陶器を製造していましたが、磁器の原料となる質の良い陶石が発見されたことにより生産の中心は徐々に磁器へと移っていきました。

その後、藩を挙げて磁器の生産に力を注ぎ、巨大な連房式登窯とそれぞれの職人による分業制を採ることで大量生産が可能になり、磁器の一大生産地へと発展していきます。

分業の流れ
波佐見焼の分業は、型屋(陶磁器の石膏型を製作する)、生地屋(石膏型から生地を作る)、陶土屋(先の生地屋に土を販売する)、窯元(生地を焼成する)、上絵屋(陶磁器に上絵を施す・絵柄のシールを製作する)、産地問屋(注文を取りまとめて各種手配を行う)などの形が採られています。分業体制は波佐見焼に限らず他の陶磁器の生産地でも見られますが、大量生産のため以外にも、職人の引き抜きによる技術の漏洩を防ぐためなどの目的があります。

「くらわんか碗」と「コンプラ瓶」

当時の代表的な波佐見焼として「くらわんか碗」と「コンプラ瓶」があります。くらわんか碗は、少し荒い白磁に唐草模様を簡単に描いた日常使いの食器です。船で食物を売る商人の「餅くらわんか、酒くらわんか」という掛け声が由来となっています。高級品だった磁器を手ごろな値段で販売したところ庶民の間で人気になり、頑丈な特徴も相まって、波佐見焼が広く普及していくきっかけになりました。

コンプラ瓶は、日本の酒やしょう油を輸出するために作られました。ポルトガル語で仲買人を意味する「コンプラドール」が名前の由来となっています。丈夫で安定感のある瓶の表面には、オランダ語で「日本の酒」「日本のしょう油」と書かれています。

波佐見焼は有田焼だった?
実は、広く一般的に波佐見焼の名称が知られるようになったのはつい最近のことなのです。波佐見町は、有田焼の生産地として知られる佐賀県有田町のとなり町のため、波佐見焼は長らく有田焼として売られていたという過去があるためです。
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波佐見焼の魅力あふれるブランド5選

波佐見焼の魅力あふれるブランド5選

HASAMI PORCELAIN(ハサミポーセリン)マグカップ

波佐見焼で高い人気を誇るマルヒロの3つのブランドが「HASAMI」「BARBAR」「ものはら」です。もともと波佐見焼の問屋であったマルヒロが2010年にHASAMIブランドを立ち上げ、その人気が全国に広まりました。

HASAMI PORCELAINは、装飾が施されていない機能美ともいえるシンプルな美しさが魅力の器。積み重ねることができるので収納にも便利で、単体はもちろん他の器と組み合わせるなど自由な発想で使えます。磁器ならではの風合いで、マグカップが口に触れた時に心地良く感じられるように作られています。色はナチュラル、ブラック、クリアの自然な色合いの3色があります。

BARBAR 蕎麦猪口大事典 紅白 おしどり夫婦 紅

伝統的な和食器づくりの技術を元に時代に即した自由な発想でデザインを行う「BARBAR」。2017年に「馬場商店」から心機一転、名前も新たに生まれ変わったブランドです。

蕎麦猪口の内側に金色の可愛いおしどりの図柄が描かれ、その名前から結婚のお祝いや夫婦の記念日に贈られることも多く、紅白の縁起物だけではなくシンプルな形の蕎麦猪口は実用的な面でも喜ばれています。

ものはら KURAWANKA Collection ボウル

2013年に立ち上げられたブランド「ものはら」。くらわんか碗が作られたころの時代の庶民に愛された素朴な味わいの器をイメージした「くらわんかコレクション」、富裕層向けの茶会などで使用された磁器をイメージした「青磁コレクション」の二つのシリーズを展開しています。

和洋食問わずさまざまな料理に合わせて使用でき、サイズ違いを入れ子で収納できるほか、同じシリーズのプレートはボウルの蓋としても使用できて便利。リーズナブルな価格で購入しやすく、長く愛用できる器です。

essence(エッセンス) ファミリーベース フラワーベース

テーブルウェアとインテリア雑貨を展開しているessenceは、1946年創業の西海陶器オリジナルブランドです。波佐見焼の里で受け継がれてきた確かな技術を使って、時代の流れに合わせた実用的で遊び心も忘れない温かみのある器を作り出しています。

ファミリーベースは家族をイメージして製作されたフラワーベース(花瓶)です。サイズは三種類で、「Father」「Mather」「Kid」と家族の名前が付いており、それぞれグリーン、イエロー、ブルーの鮮やかな色が艶のある白磁を彩っています。厚みがないので狭い場所にも置け、花を活けていなくてもインテリアとしていつもの生活をより豊かにします。

白山陶器 急須 麻の糸

白山陶器の創業は1779年、江戸時代の中期には波佐見の地で焼き物作りを始めていました。波佐見焼をそのまま表したような「なにより使いやすく生活の中になじむということ」をもの作りの基本としたシンプルで洗練されたデザインは、長く使っても飽きることがありません。

麻糸を何重にも巻き付けたようなラインと透明感のある白磁とのコントラストが美しい「麻の糸」の急須。姿の美しさだけではなく、700mlの大容量でも持ちやすい大きな持ち手、片手でも注ぎやすいようデザインされた蓋など実用的にも優れています。色はインディゴとセピアがあり、どちらも落ち着いた素敵な色合いです。

 

波佐見陶器まつり

波佐見陶器まつり

多くの人でにぎわう波佐見焼の陶器市

波佐見陶器まつりは、波佐見陶器まつり協会(波佐見焼振興会)主催で毎年ゴールデンウィークに開催されます。波佐見町にある約130もの窯元や商社が一堂に会し、正規品やアウトレット品を含め割引価格で販売するため多くの来場者が訪れます。会場は本会場となるやきもの公園広場に加えて第二会場が波佐見・有田インター入口付近に設営されます。

イベントが盛りだくさん!

波佐見陶器まつり開催期間中には、陶器市以外にも焼き物に関するイベントが催されます。

  • 白磁に上絵釉(うわえぐすり)で模様を描く上絵付体験(有料)
  • 液状になった焼き物の生地を石膏の型に注ぎ込んで形作る生地鋳込み無料体験
  • 高級品、掘り出し物が多数出品される本家陶器(せり市)
  • 職人の手ほどきを受けながら陶磁器を作るロクロ実演

他にもフォトコンテスト、陶芸協会の作品や宿泊券などの賞品が当たる抽選会など、大人から子どもまで楽しめるさまざまなイベントが行われます。

10月は「秋陶めぐり」・11月は「はさみ炎まつり」

春と秋、年二回開催されることの多い陶器市ですが、波佐見の陶器市は春のみで秋には開催されません。その代わり、10月の「秋陶めぐり」と11月の「はさみ炎まつり」で波佐見焼の販売が行われます。

秋陶めぐりは多くの窯元が集まる中尾山一帯で開催され、絵付体験などのイベントや窯元の見学ができます。メイン会場となる中尾山交流館には中尾山にある窯元の作品が展示・販売されているので、ここに寄ってから窯元を訪ねて回るのがおすすめです。4月には同じ中尾山で「桜陶祭」が開催され、桜と窯元めぐりを同時に楽しむことができます。

はさみ炎まつりは、陶器市の本会場にもなっているやきもの公園広場で開催されます。地元農産物の直売や郷土料理が味わえるほか、各種イベントが盛りだくさんの波佐見町のお祭りです。この開催中には波佐見焼の販売が行われ、陶器市でも行われるせり市や体験などもできます。

 

有田焼の下請けとして長く表舞台に出ることのなかった波佐見焼ですが、広く知られるようになってからの人気は目を見張るほどです。伝統を守りつつ新しいものを取り入れていく姿勢は、これからも多くの人に愛される器を生み出していくことでしょう。