土壌汚染や水質汚染…地球が抱えるさまざまな汚染問題

土壌汚染や水質汚染…地球が抱えるさまざまな汚染問題
土・水・空気は、私たち人間がこの地球上で生活していくうえでなくてはならない大切なものです。かつて、これらが汚染され、私たちの生存が脅かされた時代がありました。本記事では、土・水・空気の汚染とその対策について考えます。

目に見えない汚染「土壌汚染」

目に見えない汚染「土壌汚染」
(写真:photoAC)

公害の発生と対策のあゆみ

私たち人間は普段から何気なくこの地上で生活していますが、それは安全な土と水と空気があればこそです。

日本では1950年代に鉱工業が飛躍的な成長を遂げ、太平洋戦争で疲弊した社会経済がめざましい復興を遂げました。

しかし、工業生産が大幅に拡大する一方で大量の汚染物質が排出されるようになり、これらの産業が集積する地域では水俣病や四日市ぜんそくに代表される深刻な産業公害が発生します。この時代は土と水と空気が汚染され、人間の生存基盤が脅かされていました。

これらを主な契機として1960年代には公害が大きな社会問題となり、公害対策の必要性が叫ばれるようになります。そして、1967年には公害対策を総合的・計画的に推進する初めての法律である「公害対策基本法」が制定され、本格的に公害対策が取り組まれるようになります。

その後、公害対策を一元化する必要性から1971年に環境庁(現在の環境省)が設立され、1993年には公害対策をより幅広くとらえた「環境基本法」が制定されました。

これらの取り組みが進められた結果、深刻な環境汚染は見られなくなります。しかし、自動車から出る排気ガスによる大気汚染や生活排水による河川・湖沼の水質汚濁は依然として存在しており、私たちの生存基盤をめぐる汚染の問題はまだ解決したわけではありません。

以下、土と水と空気の汚染とその対策を見ていきましょう。

土壌汚染とは

土の汚染、すなわち土壌汚染は、日本で初めて起きた産業公害と言われています。

1877年(明治10年)ごろ、栃木県の足尾銅山から銅を含む工業廃水が下流の農地に流入して蓄積し、イネなどの作物の生育に被害をもたらす「足尾銅山鉱毒事件」が発生しました。

鉱山の廃水による汚染は富山県神通川でも発生し、「イタイイタイ病」として大きな社会問題となりました。イタイイタイ病は、神通川の上流にある岐阜県の神岡鉱山からの排水に含まれるカドミウムが農地に蓄積し、そこで採れた米などが食べられたことで発症しました。

このように、土壌汚染は有害物質が農地などの土壌を汚染し、健康被害を生じさせるものです。

土が汚染されるために、汚染が明らかになるまでに時間がかかります。また、一度汚染されると、汚染された土壌を取り除いて入れ替えるなどの対策が求められ、回復には長い時間と多額の費用が必要となります。

土壌汚染の原因

土壌汚染の原因の多くは、主に鉱山や工場などからの排水に含まれる有害物質や農薬です。また、人間の活動によって生じる汚染だけでなく自然由来の場合もあります。

土壌汚染の原因となる物質を大別すると、カドミウム・銅・水銀などの重金属と、ジクロロメタン・トリクロロエチレン・ベンゼンなどの揮発性有機化合物になります。

土壌汚染が起こるきっかけには主に以下のものがあります。

・有害物質が使用される際にこぼれたり、有害物質を含む排水がもれたりして土に入る
・有害物質を含む廃棄物が不適切に土に埋められ、雨によって溶け出す
・排気ガスに含まれる有害物質が土の表面に落下する

土壌汚染対策法とは

土壌汚染を見つけるための調査の方法や、汚染が見つかった時にその汚染によって人の健康などへ悪影響が出ないための適切な管理の方法について定めている法律が「土壌汚染対策法」です。

土壌汚染対策法は2002年に施行された法律で、改正法が2009年に成立し、2010年に施行されています。2009年の改正では、それまでに明らかになった土壌汚染に関する課題の解決が試みられています。主なポイントは以下の3点です。

・調査のきっかけを増やす
・健康リスクの考え方を理解してもらう
・汚染された土壌を適切に処理してもらう

土壌汚染が私たちに与える影響

土壌汚染は発生してから私たちの健康に影響が現れるまでに時間がかかります。そして、一度汚染が生じると、排出源への対策を施したとしても汚染が長期間続くため、悪影響も長期間継続するという特徴があります。

土壌汚染による影響は、私たち人間の健康への影響、生活環境や生態系への影響の二つに大別されます。

人間の健康への影響

・病気や人体の機能障害が発生する

生活環境や生態系への影響

・地下水が汚染されて飲用できなくなる
・生物が死滅する
・農作物などの生育を阻害する

土壌汚染が発生した場合

土壌汚染が発生した場合や汚染が疑われる場合は、まず土地の所有者が土壌汚染の調査を行います。その結果、基準値以下であれば問題はありませんが、基準値を超えている場合は指定区域としての指定を受けます。

そして、汚染による悪影響の発生を防ぐとともに汚染を除去するため、以下の対策を講じます。

・モニタリング
・立ち入り制限
・舗装
・盛り土、土壌の入れ替え
・封じ込め
・浄化 など

なお、指定区域から汚染されている土壌を区域外へ持ち出したり、すでに実施されている対策に影響を及ぼすような工事を行ったりする場合には、都道府県などへの届出が必要です。

また、土壌汚染の調査や対策には多額の費用が必要なことから、一定の基準を満たす場合には都道府県を通じて一定の助成を受けることができます。

 

地球を守るために考える「水質汚染」

地球を守るために考える「水質汚染」
(写真:photoAC)

水質汚染とは

私たち人間を含むほとんどの生きものは水がないと生きていくことができません。例えば私たち人間の身体は、体重の50%〜75%が水でできています。この割合は年齢や性別によって異なり、赤ちゃんなら75%、成人では60%〜65%を水が占めています。

また、人間はたとえ食べ物を食べなかったとしても、水と睡眠を確実にとっていれば2週間から3週間は生きることができるとも言われています。一方、水を一滴も取らないと脱水症状となり、わずか4日から5日で死亡してしまいます。

脱水症状は体重の2%の水が失われるだけでその症状が起こるとされており、10%が失われると意識不明に、20%で死に至ると言われています。ですから、私たちと水は切っても切り離せない関係にあるのです。

その水が何らかの原因によって汚染されると、私たちの身体に悪影響が生じます。さらに、人体だけでなく生活環境や生態系にも深刻な影響が生じてしまうのです。

日本では、1950年代の経済発展期に工業化や都市化が急速に進展したことで大都市圏を中心に河川や海の水質悪化が問題となりました。工場や市街地から出る廃水が浄化されないまま河川や海へ流れ込み、汚染を拡げていったのです。

熊本県で発生した水俣病、富山県で発生したイタイイタイ病も、工場廃水による水質汚染がその発端でした。

水質汚染の原因

水質汚染は、工場や鉱山、生活排水に含まれる有害物質がその原因です。

これらの廃水が適切に浄化処理されていれば問題ないのですが、処理されずに河川や海へ流れ込むと、汚染された水を直接飲んだり、または生き物が汚染物質を取り込み、それを最終的に人が食べることによって汚染による悪影響を受けることになります。

河川や湖沼、海は、水が流れたりそこに住む生きものが汚染の原因となる物質を摂食したりすることによって水を浄化する機能を有しています。

江戸時代までは人為的に出される汚染物質の量が自然による浄化能力を下回っていたため、大きな問題とはなりませんでした。しかし、高度経済成長期の汚染物質の激増に対して自然の浄化能力が追いつかなくなり、水質汚染が急拡大していきました。

日本では工場などでの廃水処理が義務付けられ、また、生活排水の下水道での処理が普及するなどして水質汚染の問題は落ち着きました。

しかし、中国やインド、ブラジルなど、現在急速に経済発展をしている国々ではかつての日本と同じような問題が発生し、自然や人びとの暮らしが脅かされています。

水質汚染による影響

水質汚染は、私たちの飲み水が失われるといった直接的な影響のほか、生態系にも大きな影響を及ぼします。

私たちの暮らしへの影響

・生活に必要な水が得られなくなる
・農作物が育たなくなる、異常が発生するなどして収穫できなくなる

生態系への影響

・赤潮や青潮(特定のプランクトンの異常発生)が起こる
・海藻類が育たなくなり(磯焼け)、それまでいた生物が生息できなくなって生態系が変化する

私たちでもできる水質汚染への対策

水質汚染も一度発生してしまうと広範囲に影響が及び、回復するまでには長い時間が必要です。水質汚染を発生させないためには、何よりも汚染の原因となる物質を河川や湖沼、海に流さないことが重要になります。

私たちの生活から出る生活排水も水質汚染の原因となっています。例えば以下を流した時に、それをきれいにするためにはどのくらいの水が必要なのかを見てみましょう。

みそ汁1杯(200ミリリットル)1600リットル(浴槽8杯分)
牛乳コップ1杯(180ミリリットル)2800リットル(浴槽14杯分)
ラーメンの汁(300ミリリットル)1600リットル(浴槽8杯分)
天ぷら油(500ミリリットル150000リットル(浴槽750杯分)

このようなものを流さずに処理する少しの工夫で、水質汚染を減らすことができます。

簡単にできる取り組みは以下のとおりです。

・調理くずや食べ残しを流さない
・食器や鍋などのひどい汚れや油は、紙などで拭いてから洗う
・みそ汁やめんの汁などは、残さない量を作る
・使用済みの油は流しに流さない
・洗濯には生分解性の高い石けんや無リン洗剤を適量使う

 

最も身近な汚染問題「大気汚染」

最も身近な汚染問題「大気汚染」
(写真:photoAC)

大気汚染の原因

空気は、土・水と並んで私たち人間が生きていくうえで不可欠なものです。そして、私たちは生きている限り常に呼吸をしているので、空気は土・水よりもさらに身近なものと言えるでしょう。

その大切な空気を「大気」と呼び、空気が汚染されることを「大気汚染」と呼びます。大気汚染も土壌汚染や水質汚染と同じように、日本では高度経済成長期に深刻な問題となりました。

特に日本で最初の臨海コンビナートが形成された三重県四日市市では大気汚染が深刻化し、「四日市ぜんそく」と呼ばれる問題となります。

また、1960年代に自動車が急速に普及すると、自動車から出る排出ガスに含まれる汚染物質も大気汚染の原因となっていきました。

大気汚染は、何らかの物質を燃やした時に出る黒煙やすすがその直接的な原因です。特に問題となったのは、排出ガスに含まれる硫黄酸化物、窒素酸化物、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質などです。

大気汚染対策の取り組み

大気汚染は、空気中へ汚染物質が放出され、大気の流れに乗って広範囲に汚染が拡大するという特徴があります。上で述べたとおり、1960年ごろから大気汚染が原因の健康被害が発生したことで対策が求められるようになりました。

1962年には、大気汚染防止として最初の法律である「ばい煙の排出の規制等に関する法律」が制定されます。しかし、この法律では同じころに急速に増えつつあった自動車排ガスによる汚染が対象とされていなかったことから、自動車排ガス規制を含む「大気汚染防止法」が1968年に成立しました。

「大気汚染防止法」はその後の1970年に改正され、規制対象の物質が増えるとともに、それまで一部に限定されていた規制地域が全国に拡大します。これによって、国が法律によって全国一律の規制基準を定め、企業などがこれを守るという仕組みが整い、大気汚染対策が進展していきました。

その後も自動車がますます普及して排気ガスが大気汚染の原因として大きな問題となってきたことから、自動車排出ガスへの対策が強化されています。

さらに「自動車NOx・PM法(自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)」が1992年に成立し、また、排出ガス規制も年々強化されるなど、継続的な取り組みが進められています。

 

土・水・空気のどれかが汚染されると私たちの命は危険にさらされます。これは、人間だけでなく全ての生きものにとっても同じです。これらの汚染に関心を持ち、汚染の原因を少しでも減らせるように、できることから取り組んでいきましょう。

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