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関サバの旬は?
関アジ・関サバとは
大分県佐賀関の豊予海峡で釣れるアジとサバは、一般的に流通しているものといったい何が違うのでしょう。その答えは豊予海峡の地形にあります。
この海峡は瀬戸内海の水塊と太平洋の水塊がちょうどぶつかり合う水域で、水温が年間を通して一定のためにえさとなり得るさまざまな魚が豊富に生息しています。また、荒波が起きやすく魚が生きていくためには多量の運動が必要となるため、えさとなる生き物も十分に身が引き締まります。
- 魚の生息しやすい水域
- 豊富で身の引き締まったえさ
この二つの条件が、一般的なアジとサバにはない絶品の味と歯ごたえが生み出しているのです。
関サバの旬は10月~翌3月
アジとサバの一般的な旬の時期は、
・アジは5月~7月
・サバは10月~12月
とされていますが、関アジと関サバはここでもほかとは異なります。
・関アジは3月~10月
・関サバは10月~3月
とその旬の長さは圧倒的。専門家の間では、豊予海峡の水温が年間を通して一定であることが関係していると言われています。
関サバは10月から旬を迎えますが、特に12月以降はよりいっそう美味しくいただけます。さらに、その中でも特に2月の関サバの品質がもっとも良いと評されることがあります。これは、水温が比較的低いため、その中で泳ぐ関サバの身が引き締まるためです。この時期のものは格別の味わいが楽しめるでしょう。一匹あたり安くて2,000円、高いものでは6,000〜7,000円する場合もあり、どうしてもお値段は張ってしまいますが、それを上回る満足度になるはずです。
関サバは刺身が格別
また、料理方法も特別です。サバならシメサバや味噌煮、アジなら通常は塩焼きやタタキといったところですが、関サバや関アジは刺身料理でいただくのが通例。ほかにはない引き締まった身と歯ごたえの良さが絶品です。
関アジ・関サバのブランド化
地域ブランド化とは
「地域ブランド化」については、経済産業省で以下のように定義付けられています。
「地域ブランド化とは、①地域発の商品・サービスのブランド化と、②地域イメージのブランド化を結びつけ、好循環を生み出し、地域外の資金・人材を呼び込むという持続的な地域経済の活性化を図ること」
関アジ・関サバは、
- 大分発のアジ、サバを活用していること
- 地域外の資金や雇用を生み出していること
の2点から地域ブランドとして確立された商品であることが分かります。しかし、そのブランドが成功するまでにはさまざまな苦労がありました。
関アジ・関サバのブランド化への歴史
関アジと関サバが全国に広くその名を知らしめるようになったのは1988年ごろと比較的最近のことです。
もともと佐賀関の漁師は、西は長崎県の対馬、東は伊豆諸島・八丈島、南は鹿児島の奄美大島と広く沿岸瀬魚釣りを行っていたため、佐賀関で釣れるアジやサバが特有な外観を持っていることを知っていたものの、魚価は上がらず街の漁師も漁協も厳しい状況を迎えていました。
佐賀関で釣れる別格の味を誇るアジとサバをどうにかしてブランド化することはできないかと考えぬいた結果、漁協で全て買い取る決断をします。
これまで漁協によって漁獲された魚は、専門の仲買業者を通して市場に出回っていましたが、その仲買業までも漁協が担うという当時としては異例の方法を行ったのです。
ほかとは異なり一級の質がある佐賀関のアジやサバ、それを最も知る漁協自らが広告塔となり販売に着手、
- 高級料亭への売り込み
- 活発なプロモーション
を繰り返した結果、認知度は次第に広まっていきます。
しかし、巨大市場東京で展開するため、佐賀関産のサバを刺身で提供するキャンペーンを計画するも、その会場探しに苦労する日々が続きます。当時、生のアジやサバを提供することは東京都内のホテルなどの会場からは拒まれていたのです。
ようやく見つかった会場は同じ漁協グループの全国漁業協同組合連合会が管理する場所で、キャンペーンも一定の成果を上げました。その後、品質が評価されて都内有名店での取り扱いが開始。好景気に後押しされ消費は急拡大します。出せば出すだけ高値で売れ、1本1万円以上で取り引きされることもありました。
関アジ・関サバの地域ブランド保全への取り組み
景気に後押しされ急拡大した関アジ・関サバは、そのままの勢いで誰もが知る「高級魚ブランド」として確固たるものとなりました。
しかしながら、その人気にあやかろうとする人によって市場に類似品が出回るようになります。そこで、大分県の漁協では関アジと関サバを商標登録し、魚体一つひとつに公認マークを付けるなどの対策を行い、大分県の唯一無二のブランド商標として成長していったのです。
また1990年代、バブル崩壊の影響で消費は低迷。大都市圏を中心に販促していた関アジ・関サバもあおりを受けます。
この状況から抜け出すために、佐賀関漁協は
- 大都市圏だけではなく各県での試食会の開催
- 関アジ・関サバを使用した加工品の製作
にも取り組み始めます。
また、品質の維持を目的として、関アジと関サバの商標を名乗るための4つの条件を設定します。
1本釣り漁
関アジと関サバは全て一本釣りでのみ漁獲されています。普通アジやサバは「回遊魚」といって、季節に応じて一定の経路を群れで移動する習性があります。そのため、通常の漁獲では群れになって泳いできたところを狙い網で一網打尽とするのです。
しかしながら、関アジと関サバは回遊せず、一所の瀬に居付く「瀬付き」というほかのアジやサバにはない習性があります。そのため網で一網打尽とはいかず、一本釣りによって漁獲されているのです。
また、曳き網(ひきあみ)で漁を行うと、魚同士がぶつかって傷付いてしまう恐れがあるため、劣化を防ぐという意味でも一本釣りが選ばれています。
一日泳がせる
水揚げされた関アジと関サバはそのまま出荷されず、いけすに移されて一日自由に泳がせられます。
すぐにでも出荷した方が新鮮で活きの良い状態のまま市場へ届けられそうですが、これにはちゃんと理由が存在しています。
釣ってすぐの魚は異常な興奮状態に陥っているため、そのまま出荷してしまうと狭い水槽の中で暴れて自らを傷付けてしまう恐れがあります。そのため、一日いけすの中で泳がせることで魚を落ち着かせいるのです。
新しく大きないけすが必要となり、コスト面と管理面でも大変にはなってしまうものの、このような手間を惜しまない努力の積み重ねで品質は保たれています。
面買い
関アジと関サバは、「面買い」という方法によって買い付けが行われています。
これは、計量器へ魚を移す際に魚が暴れて無理な負担がかかり、身割れを起こしてしまうリスクを排除するためです。
ただでさえ、生きた状態の魚の重量を判断するのは難しいと言われており、いけすで泳いでいる状態の魚であればより熟練の技術と経験が必要となります。
活け締め
港へ運ばれ、出荷の決まった関アジと関サバは、その場で一匹ずつ丁寧に「活け締め」処理が施されます。
生きた状態で出荷し、さばく直前にしめた方が新鮮でおいしいのではないか、と思われがちですが実はそうではありません。普段と違う環境で過ごす方が魚にとってはストレスがたまり、身は痩せ、味は劣化していきます。
一日自由に泳がせ、ストレスのなくなった状態でなるべく早くしめることで、新鮮でおいしい味を封じ込めているのです。
関アジ・関サバの地域ブランドの維持は、単に魚の品質維持だけではない佐賀関漁協の工夫や苦労があってこそだったのです。
旬の関サバを楽しむ!
関サバを通販で取り扱っている商品を紹介。絶品とされる刺身でお楽しみいただけるものもあります。
田辺海産 おいしい干物セット
関サバと同じ豊予海峡がある豊後水道にて水揚げされたサバの開き。脂がしっかりと乗った絶品の干物です。
大分県漁業協同組合 関あじ関さば りゅうきゅうセット
新鮮な関アジと関サバを贅沢に甘辛いタレに漬け込んだ、大分の郷土料理「りゅうきゅう」。大分の漁師が沖縄の漁師に作り方を聞き、持ち帰ったことからその名が付けられたとされています。熱々のごはんに乗せた「りゅうきゅう丼」も絶品です。
佐賀関漁協 一本釣り活け締め 関あじ
最後に、関アジについても商品をピックアップしてみました。
産地直送で、肉質・脂・旨み、どれをとっても特級品の関アジです。着日であれば刺身でお楽しみいただけます。
年に一度の「関あじ・関さば祭り」
通販ではなく現地大分の佐賀関を訪れて旬の関サバを食べてみたいという方には、年に1度開催される「関あじ・関さば祭り」もおすすめです。
関アジ・関サバの旬が重なる毎年3月の中旬ごろに、大分市佐賀関で刺身やクロメ汁が低価格で味わえるイベントです。その他のご当地の海産物と特産品の販売も行われています。
もちろん、お祭り以外の日も佐賀関の飲食店では関サバを扱った料理をいただけます。大分へお越しの際は、ぜひ佐賀関まで足を運んでみてはいかがでしょうか。
いかがでしたか。さまざまな苦悩や困難を乗り越えた関アジと関サバだからこそ、地域ブランドとしての今があるのです。大分佐賀関特有の自然環境が生んだ関アジ・関サバ、ぜひ一度ご賞味ください。