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2025年問題とは
2025年という年が注目されるのには理由があります。戦後間もない1946年、第一次ベビーブームにより爆発的に日本の人口が増えました。いわゆる団塊の世代にあたる人々です。
戦後の高度成長期を支えて日本の復興と発展に貢献してきた年代の人々がそろって75歳を迎える年が2025年。この時、日本はさまざまな問題に直面するという予測があるのです。
特に、急増する高齢者に対しての介護・医療や年金の費用は、果たして少子高齢化が進んでいる日本で支え続けていけるのでしょうか。
このように、2025年に迎える超高齢化社会において懸念される福祉や社会保障に関する問題を、「2025年問題」と言います。
2025年の高齢者人口の問題
高齢者人口の推移・問題
厚生労働白書によると、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じ、さらに減少傾向が続いています。このままの状態が進むと、2025年には総人口の約1億2000万人に対して高齢者が約3600万人という試算が出ており、実に人口の30%が高齢者となる計算です。
総人口が減り続けているなかで高齢者だけが増えるということは、少ない現役労働者で多くの高齢者を支えなければならないということに他なりません。
1965年の高度成長期は、多くの労働者が一人の高齢者支える「胴上げ型」と呼ばれるスタイルでした。しかし、人口減少が進んできた2015年には4人で一人の高齢者を支える「騎馬戦型」へと変化しました。さらに、このままの状態が続くと労働者一人が高齢者一人を支える「肩車型」へと移行し、大きな負担が発生してしまいます。
これらの問題を解決するために、厚生労働省は高齢化に対する新しい社会モデルを構想しています。これまでのように全面的に高齢者を支えるスタイルだけではなく、高齢者が長く働いて自活していける環境の整備を進め、生涯現役で暮らせる方向性を検討し始めたのです。
医療・介護不足の問題
医学の進歩により飛躍的に寿命が伸びた現代では、年齢に関係なく健康に暮らしている高齢者も多くいます。生涯現役で働き自活する高齢者が増えていくことは、確かに2025年問題の対策としては有効かもしれません。
しかし、その健康を維持するためには日々の健康管理とそれを指導する体制、さらには高齢者だけの世帯でも安心して暮らせる医療や介護サービスが整備される必要があります。ところが、この医療や介護サービスの安定した提供も難しくなるかもしれないのです。
高齢者の医療費用が増え続けているなか、政府は医療費を削減する一環として病院の病床を減らす目標を出しています。つまり、手厚い医療を必要としない場合は自宅や介護施設での治療に切り替えるという方針です。
社会保障費用の削減という意味では正当と言えるかもしれませんが、実際には介護サービスを成り立たせるために別の予算を組む必要性があるうえ、絶対数として医療や介護に従事する人数が足りません。
住み慣れた地域で長く暮らしていくため、地域全体で支え合えるシステム作りをするというのが最終的な目標ですが、医療・介護の従事者よりも多い高齢者に十分な医療体制や介護サービスを提供するには、まだまだ問題が山積みとなっています。
2025年の年金問題
年金制度は残っているのか
老後の生活を支える資金源として年金を受け取るというライフプランを考えている方は多いでしょう。しかし、この年金制度が2025年にも崩壊せずに続いているかどうかは分かりません。
政府の考えている試算では、「経済成長により毎年国民の賃金が上がるため、それにより税収も増えていくので年金制度は破綻しない」としています。しかし、一人当たりの税収が増えても現役世代は全体的に減少しているため、支えなければならない高齢者が増加した将来の日本では安心できないのではないか、という見方が多くあります。
もちろん、年金保険料以外にも消費税やその他の課税対象の引き上げといった増税対策も視野に入っており、年金支給開始年齢の引き上げや年金支給額の減額も検討されています。
現役世代からみると増税は家計にダイレクトに関わってくるため反対する意見も多いですが、将来的に年金制度を残すために必要な部分もあることを理解し、国民全員が危機感を持つことが重要でしょう。
2025年プア・ジャパニーズ問題
プア・ジャパニーズとは
少子高齢化が進むということは、それだけ日本の市場が縮小することにも繋がります。これまでの生産量を下回る分しか物は売れず、会社の売り上げは減少し、それにともない賃金も安くなり、人々は最低賃金でも働かざるを得ない状況となるのです。
2025年には、世界的にいわゆる「お金持ちの国」として認識されていた日本人の生活は増税と安い給与で圧迫され、徐々に質素な暮らしへ変化するという予測がされています。このような「貧しい暮らしをする日本人」が多く生まれるであろう問題のことを「プア・ジャパニーズ問題」と言います。
もちろん全ての日本人が安い給料で働くわけではありませんが、AIなどの発達によりこれまで人間が行なっていた業務が機械に取って代わられ、少ない業務がさらに効率化されて労働者は必要とされなくなることも考えられます。
もしこれが現実に起こってしまうと、安い賃金で一人の若者が高齢者を支えつつ労働を行うことになり、子育てができる環境が整わず、ますます少子化が進んでしまうことになりかねません。
プア・ジャパニーズ問題は、単純に給料の良し悪しだけではなく、安心して暮らしていける社会的な余裕がない日本の姿を表しているのかもしれません。
外国人労働者の増加による治安の悪化
現役世代の労働力を確保することが難しくなったいま、すでに日本では多くの外国人労働者が労働に従事している姿をよく見かけます。コンビニ・スーパーの店員や飲食店でのサービス業といった分野では、特に危険もなく簡単な日本語が通じれば働くことも可能なことから、外国人労働者が急増しています。
プア・ジャパニーズが懸念されている日本であっても、近隣のアジア諸国から訪れる外国人にとっては、それでもまだ豊かさがあふれているように受け取られています。また、日本人労働者の絶対数が足りない現場は高収入でなければ日本人を雇用することが難しくなり、安く雇える外国人労働者が受け入れられる土壌となっています。
ここで、外国人労働者が増えることで一定層ができあがると、さまざまな問題が起こるという予測が出てきています。
最も懸念されているのは治安の悪化です。2015年の外国人による犯罪検挙数は1万人を超えており、緩やかな上昇となっています。雇い主がハローワークに届出を出していなかったり超過勤務や重労働の影響もあり、勤務条件の厳しさに耐えきれず不満が爆発した外国人が犯罪に手を染めるケースも少なくありません。
慣れない国で、馴染めないルール・低賃金で負荷の高い労働・思うような仕送りを自国の家族にできないといった環境により、外国人労働者が爆発的に増える2025年には犯罪数も増加するであろうという予想が出ています。
経済的な不安と不満は、日本人だけではなく豊かな生活を夢見て来日した外国人労働者の心もむしばむ可能性があるのです。
未来を正確に予測することは誰にもできませんが、現代日本の抱えている問題に意識を向けて、そのなかから自発的に考えて行動することが求められるでしょう。