日本でも着々と導入が進むバリアフリーとはいったい何?

日本でも着々と導入が進むバリアフリーとはいったい何?
いまやその言葉を知らない人はほとんどいない「バリアフリー」。日本でも定着していますが、「バリアフリーとはいったい何?」という質問に対して的確に答えられる人は意外と少ないのが事実です。

日常生活の中に潜む障壁

日常生活の中に潜む障壁

バリアフリーとは

目や足などが不自由な人にとって大きな弊害となり得る「障壁(バリア)」を「除く(フリー)」ことを「バリアフリー」と言います。

もともとは「建築における物理的な障壁を除去する」という意味を持つ建築用語でしたが、高齢化の進む近年では、「物理的バリア」「社会的バリア」「制度的バリア」「心理的バリア」の除去といった広い意味で捉えられるようになりました。

物理的バリア

物理的バリアは、道路や住宅の段差など目に見える障害のことを指します。健常者には全く問題にならないような道ばたのちょっとした段差でも、高齢者や障害者にとっては大きな問題です。これらを取り除いていく、という考えがバリアフリーの基本となっています。

社会的バリア

社会的なバリアとは、相手と意思疎通を図る際に発生する障害のことを指します。例としては、「外国人との会話で通訳が必要になる」「耳が不自由な人と会話する際に手話が必要になる」といったものです。

制度的バリア

制度的なバリアとは、社会に進出する際に発生する弊害のことを指します。身体に障害があるというだけで、能力や資格を持っているにもかかわらず就職・受験の資格が奪われてしまう場合などがこれにあたります。

心理的バリア

心理的なバリアとは、人間の心理的な部分にある心の壁のことを指します。「障害者は仕事ができない」「障害者というだけで嫌悪や哀れみの目で見る」といった偏見や差別などがこれにあたります。

このように、生活の中のいたるところで多くのバリア(障壁)が存在しています。バリアフリーとは、このようなあらゆるバリアを除去し、さまざまな人にとって快適な社会を作っていくことを意味しているのです。

バリアフリーの歴史

バリアフリーという考え方が生まれたのは、1960年代にまでさかのぼります。1968年にアメリカで「建設障壁除去法」が制定されたのをはじめとして、翌年には、障害者が使いやすい施設になっているかどうかを簡単に見分けられる「国際シンボルマーク」も制定されました。

さらに、1990年には障害者であることを理由に雇用の際の差別扱いを禁止する「障害を持つアメリカ人法」が制定され、翌年には「高齢者のための国連原則」を採択し、高齢者への対策も進められました。

日本では、1983年に初めて障害者用施設整備のためのガイドラインが施行されます。これが、日本におけるバリアフリーの原型です。

1994年には、不特定多数の人が利用するデパートや病院・映画館などの公共施設において、出入り口や通路・階段などを高齢者も身体障害者も不自由なく利用できるように対策を促すことを目的とした「ハートビル法」が制定。

さらに、2000年には電車やバスなどの交通機関を誰でも快適に利用できる環境を目指していこうという試みから「交通バリアフリー法」が施行されます。

2006年には、ハートビル法と交通バリアフリー法。これら二つを一体化させることで、対策の対象を極めて広範囲に広げた「バリアフリー新法」が制定されています。

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なぜバリアフリー化が推進されるのか

なぜバリアフリー化が推進されるのか

なぜこんなにも急ピッチでバリアフリー化が進められているのでしょうか。その背景には、2020年に開催される「東京パラリンピック」や「訪日観光客数2,000万人計画」が関係していると考えられます。

東京パラリンピック

東京パラリンピックの期間は、日本国内からはもちろんのこと、世界各地から障害を持ったアスリートが東京へと集結します。パラリンピックが開催される2週間ほどを滞在するには、バリアフリー化された公共施設や交通機関が必要となるのです。

訪日観光客数2,000万人計画

日本では、訪日観光客数2,000万人計画という非常に大がかりな計画が進んでいます。観光局の調査によると、2013年の訪日観光客数が1,036万4000人であったのに対して2014年には1,341万4000人にまで増加しており、2020年にはその数は約2倍にもなると言われています

また、外国人観光客は東京のみならず日本各地さまざまな土地への観光を行うため、必然的に日本全国でのバリアフリー化の早急な推進が求められているのです。

障害者の社会進出

2013年の法改正により障害者雇用率が引き上げられたため、日本に在住している障害者の社会進出が増えてきていることもバリアフリー化推進の大きな要因となっています。

 

バリアフリー化へのさまざまな課題

バリアフリー化へのさまざまな課題

着々と進められているバリアフリー化ですが、さまざまな課題や問題点を抱えているのも事実です。誰もが住みやすい環境を目指すためには、この点を早急に改善していかなければなりません。

観光地域では未整備の場所も多い

東京などの都心部を離れると、意外とバリアフリー設備が整っていないところも多く見られます。例えば、関東某所にある由緒正しい老舗の温泉旅館では、高齢者が数多く宿泊していたにもかかわらずバリアフリー設備は全く導入されていませんでした。管理の行き届いた館内風景は非常に素晴らしいものではありましたが、古くて急な階段・段差のある通路・スロープのないトイレなどは手つかずで残されているのです。

これには、古き良きたたずまいを後世に残していくためにバリアフリー化を断念しているという背景もあります。バリアフリー化を進めるためには、伝統を守りながらも高齢者に優しい設備にする、という二つを両立させる案を探していかなければなりません。

補助金対象にならなければ費用がかさむ

いざ自宅をバリアフリーリフォームしようと思っても、段差をなくしたりトイレや風呂を使いやすくするだけでも100万円はかかります。補助金の対象にならない家庭では全額を支払わなければならないため、手軽に導入できないというのが現状です。

タッチパネルの普及

いまや全国的に普及しているタッチパネル。スマホやパソコンのみならず、自動販売機や券売機・飲食店の注文などに利用する場合もあります。普段何気なく使っている人がいる一方で、高齢者や障害者にとっては不便に感じる部分も多々あります。

しかし、だからといって今までタッチパネルだったスマホや券売機をなくしてしまうわけにはいきません。「便利性」と「バリアフリー」の両立は非常に困難で、バリアフリー化を進め過ぎてしまうと国の技術の進歩を滞らせてしまう場合もあるのです。

心理的なバリアフリー意識の強化

近年、車椅子の人専用の駐車場がある複合施設が増えています。しかし、「混んでいるから」「店に近いから」などの理由で健常者がその場所に止めてしまうこともあります。

いくらバリアフリーの施設が充実していても、心理的なバリアフリーが解決されていなければ意味がありません。高齢者に対して積極的に席を譲ったり、妊婦へ手を貸してあげたりなど、小さなことから心のバリアフリーを実践していくことが大切です。

 

高齢化が進む日本において、バリアフリー設備の充実は今後の発展のためにも欠かせないコンテンツ。同時に私たちも高齢者や障害者に対する優しさや思いやりの精神を持って助け合うことで、外部的にも内部的にもバリアフリー化を進めていきましょう。

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