なぜ待機児童問題は解決しないのか原因を考える

なぜ待機児童問題は解決しないのか原因を考える
保育が必要な年齢であるにもかかわらず保育所に入れない待機児童の数が、年々増え続けています。出生数が減少して少子化の進んでいる日本において、なぜ待機児童問題はなくならないのでしょうか。その原因について考えていきます。

待機児童の原因

待機児童の原因

児童の都市部集中問題

基本的に日本の人口は、仕事が数多くあり生活の環境も充実している都市部に集中しています。地方からの移住や周辺地域からの流入により都市部の人口は増加を続けており、保育施設の数が間に合っていないのが現状です。

また、保育施設を作る場所が限られてしまうことも問題になっています。都市部では、国の建築基準を満たしている土地の広さを確保できる場所が見つかりにくかったり、近隣住民との騒音トラブルなどにより、保育施設の建設を諦めなければならない場合もあります。

そのため、待機児童の数は都道府県別で東京都が最も多く、その割合は約40%を占めています(人口1000人あたりの割合で見ると一位は沖縄県、東京都は第二位)。

保育士の不足

国の取り組みにより保育園の数は段々と増えてきてはいますが、そこで働く保育士の不足が深刻です。保育士の資格は持っているものの、「少ない賃金」や「過酷な労働環境」などが原因で、諦めてしまったり辞めてしまう人も多くなっています。

少ない賃金

2017年度に厚生労働省によって行われた職業別の給与調査によると、保育士の月々の平均給与は21万4600円。これは、全職業の平均給与よりも11万円低い数値です。

多くの家庭から大切な子どもの命を預かり成長を支える責任感の強い仕事であるにもかかわらず、保育士の賃金はとても低い状況にあるのです。

そこで政府は2017年に、賃金の引き上げを行うために保育士歴7年以上の約10万人の保育士に対して、副主任や専門リーダーといった役職を付けることで月の給料に4万円を追加するという取り組みを行っています。

また、保育士歴3年の保育士に対しても、研修の修了を条件に月の給料を2%アップするという取り組みが行われているものの、それでも全職業の平均給与に比べると10万円ほど低い数値であることに変わりはないため、保育士不足が解消されるかどうかは不明です。

過酷な労働環境

保育士の一般的な就業時間は、朝の7時ごろから夜の19時ごろまでのおおよそ12時間です。時間外保育が行われている場合、22時まで残って子どもの面倒を見ている場所もあります。

さらに、子どもの保育が終わった後にも、

・子ども一人ひとりの当日の保育状況を記した連絡ノートの作成
・保育園内の清掃
・壁面装飾など、翌日のイベントのための準備

などのさまざまな業務が残されています。子どもの面倒を見る仕事にもかかわらず、それ以外の仕事も多くこなさなければならないのです。

残業が多いことも問題ですが、保育園ではサービス残業が多く行われているため残業代は発生していません。保育園の収入を支えているのが保育料・国や自治体からの補助金のため払える残業代にも限りがあり、すぐにこの状況を打破するのは難しいというのが現状です。

女性の社会進出・共働きの増加

時代の変化にともなって働きながら子育てをする女性が増えてきていることも原因の一つとして考えられます。今までは出産や育児に専念するためキャリアを積んでいくことを諦めて退職を選択していた女性が、そのまま仕事を続けるようになりました。

厚生労働省によると、25歳~44歳の女性の就業率は70%を超えており、社会進出は着々と進んでいます。年功序列システムの撤廃や非正規雇用契約の増加なども相まって、家計を少しでも助けるためにと共働きを選ぶ女性が増えているのです。

こうした女性の社会進出や共働きの現状が子どもを預けざるを得ない家庭を増やし、待機児童問題をさらに深刻にさせています。

核家族化の進行

生活や仕事の利便性から都市部へ移住する人が増え、核家族化が進行しています。いまやその数は世帯全体の56%にも上ります(2015年時点)。これによって日中の時間帯に祖父母などに預けることが困難になり、保育施設に頼らざるを得なくなるケースが発生しています。

【関連記事:深刻な核家族化は日本にどのような影響を与えるか

 

待機児童問題への対策

待機児童問題への対策

保育士の確保

待機児童問題を解決するためには、まず保育園の数を増やし、それにともなって保育士の人数を確保することが大切になってきます。そのためには、保育士の待遇を良くしていくことが必須条件となるでしょう。

実際、保育士資格を持っている人の中で保育士として働いている人数は、全体の3割ほどしかいません。残りの7割は待遇の悪さから別の仕事に就いてしまっているのです。保育士が長く働き続けられる環境にするためには、どのようなことが必要となるのでしょうか。

給料のアップ

上述したように、役職を付与することで月々の給料に4万円を追加するなどして低い給与の改善は行われてはいるものの、それでも仕事内容には見合っていないという意見が多くを占めます。

そこで、上乗せされた給与にさらに追加で金額を上乗せしたり保育士が借りている家の家賃の一部を補助したりなど、さまざまな補助を独自に行っている自治体もあります。

人材の育成

保育士の不足を補うため、資格を取りやすくするための取り組みが行われています。

例としては、

幼稚園教諭の普通免許状を持っている人に対して特例で試験を免除して保育士資格を与える
保育士資格を持たずに無認可保育園で働いている人や指定の保育士養成施設に入っている人を対象に、金銭的に支援をする

などです。

保育士への研修支援

保育士の高い離職率を防止するため、新人保育士などを対象に研修の支援が行われています。

例としては、

保育士を対象とした研修の参加にともなって発生する代理の保育士への費用を支援する
離職率の低下を実現することで発生する「職場定着支援助成金」の活用を促進させる
就職前後で発生する現実と理想のギャップの穴埋め対応を行う

などです。

労働時間・拘束時間の明確化

もとより拘束時間の長い仕事のため、残業が多くなればなるほど労働環境は過酷になります。保育士の労働時間を把握するためのチェックリストを作成したり評価制度や健康づくり制度の導入をすることで、働きやすい環境の実現が期待されています。

無認可保育園の魅力を伝える

「国に認可されていない保育園」という認識から認可保育園に比べると人気が下がる無認可保育園。そのため、第一志望の認可保育園に入園できない場合に待機児童になってしまう子どもが多く存在しています。

無認可保育園の保育料は若干割高ではあるものの、保育時間に融通が利いたり入園の条件が認可保育園に比べて緩かったりするなど、魅力的な面も多く存在します。

【関連記事:認可保育園の基準は?無認可保育園と比較をしながら解説!

保育の多様化

平成27年4月より開始された「子ども・子育て支援制度」において多くの制度が追加され、多様化する保育のニーズに対して「事務所内での保育」「病児・病後児に対する保育」「特定保育」などさまざまな支援が行われるようになりました。

【関連記事:子ども・子育て支援新制度は待機児童問題解決への糸口となるか

 

増え続ける待機児童の人数を減らすために、保育園の数を増やしていくことはもちろん大切なことです。しかし、保育士の過酷な労働条件や低い給与の改善により保育士の不足を解消していくことが、何よりも優先されるべきなのかもしれません。

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