海面上昇が進むと日本はどうなってしまうか

海面上昇が進むと日本はどうなってしまうか
四方を海に囲まれている日本にとって、世界規模で注目されている海面の上昇は、決して目を背けることができない重要な問題です。もし海面上昇が進んでしまったら、日本はどうなってしまうのでしょうか。海面上昇と予測される日本の未来について、詳しく解説していきます。

海面上昇が起こる仕組み

海面上昇が起こる仕組み

海面上昇の現状

海面上昇は、日常生活において認識することは難しいですが、「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」のデータでは、その現状をはっきりと確認することができます。

1988年11月に設立されたこの組織は、世界各国の政府に推薦された専門的科学者の評価を定期的に発表。目に見える数値にすることで海面上昇に関する危機的状況を世界規模で発信し続けています。

・過去2000年の間に起こった海面上昇は年間平均で0.2mmであったと推測される
・1961年から2003年の間で起こった海面上昇は年間平均で1.8±0.5mmである
・急激な海面上昇は19世紀半ば〜20世紀半ばごろから始まったと考えられる
・20世紀の海面上昇は年間平均で1.7±0.5mm
・これらの状況から100年間で約20cmの海面上昇が起こっていると推測される

このような現状をふまえて作られた今後のシナリオは、以下のように決して明るいものではありません。

・海面上昇のスピードはこれまで以上に速くなる可能性がある
21世紀中には海面上昇が進み、最大で80cmを超えると予測される
・海抜の低い地域の水没や地形の変動の恐れがある

すでに始まっている海面上昇を食い止めるためには、世界規模での取り組みが必要不可欠です。

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海面上昇が起こる原因

では、ここまで海面上昇が進んでしまった原因は、一体どのようなものなのでしょう。直接的な要因と考えられるのは以下の項目です。

・陸地を覆う氷床の融解(主にグリーンランドや南極大陸)
・氷河などの陸上にある氷の融解
・溶けた氷が流れ込んだことによる海水の増減や膨張および収縮

海水面に浮かんだ大きな氷の塊が溶けたとしても、全体的な質量に変化は起こらないため海水面が上昇することはありません。しかし、陸上にあった巨大な氷の塊が溶け出して海へ流れ込むと、物理的に海水が増えることとなり結果として海水面が上昇します。

そして、この原因と考えられているのが地球温暖化です。19世紀から20世紀にかけて人類は目覚ましい発展を遂げましたが、それにともない排出され続けた二酸化炭素を含む温室効果ガスは、急速に地球上を覆い平均気温を上昇させ、これによって氷が溶け出し海面上昇が起こったと考えられているのです。

IPCCの第四次評価報告書では、以下のような試算が出されています。

環境保全に力を入れた場合には21世紀末で18cmから38cmの海面上昇
もし経済成長を重視した場合には26cmから59cmの海面上昇

環境保全と経済成長の関係性、これらを加味したうえで発表された報告書は、今後の人類の営みに重要な選択を迫る結果となっています。

 

海面上昇が続くとどうなるか

海面上昇が続くとどうなるか

日本の海面上昇による影響

もしこのまま海面上昇が続けばどうなってしまうのか、日本を中心に具体例を見てみましょう。

海面上昇の影響として一番に思い浮かぶのは、沿岸部の水没です。日本は周囲を海に囲まれており、海抜が1m未満の場所が国土全体の0.6%と言われています。つまり、1mの海面上昇が起こると、沿岸部を中心に0.6%の国土が海に沈むことになるのです。

環境省の資料を見ると、以下のようなことが起こると推測されています。

・大阪の北西部から堺市にかけての沿岸部が水没する
・東京都江東区・葛飾区・江戸川区・墨田区のほぼ全域に影響が出る
・日本全国の砂浜の9割が失われる
・沿岸部に生息する生物への影響が出る
・河川や地下水へ塩水が侵入する

このような状況を防ぐためには、臨海地区からの撤退や護岸工事などによる順応的な対策を行うしかありません。もともと平野部が少ない日本では物理的に撤退する土地がないため、おのずと順応的な対策を選ばざるを得ない状況になるのです。

しかし、この対策にかかる費用は国土交通省港湾局の試算で20兆円近くなると予測されており、沿岸部の工場や施設・交通ルートや自然保護といったさまざまな面での計画的な立案が必須となります。

馴染みのある自然・仕事場・よく遊びに行く施設・通勤に使用している道など、海面上昇が起こることで壊されるのは物理的な自然・物だけではなく、人間の営みそのものなのです。

海面上昇でツバルという国が水没してしまう?

残念ながら、海面上昇ですでに日常生活が崩れ危機的状況を迎えている国も存在しています。

赤道のすぐ南、ニュージーランド近くのサンゴ礁の島国「ツバル」。小さな島々が連なって形成されたこの国では、近年劇的に変化した気象変動により多くの被害が報告されるようになりました。

もともと海抜が2mほどしかないツバルは、海面上昇に対してとても脆弱(ぜいじゃく)です。少しの海面上昇でも地形が変動を起こすことは想像に難くないですが、それに加えてさまざまな現象が危機的状況を生み出しているのです。

・サンゴの白化により島を形成するサイクルが狂ってしまっている
・地球温暖化による異常気象で自然災害に見舞われている
・満潮時に地面から水が吹き出して井戸水に海水が混じるようになる

一度狂ってしまった自然サイクルは、短期間で元に戻ることはありません。豊かな海から魚影は消えて漁ができなくなり、海水が混じったことで農作物は壊滅的。ツバルの現状は、決して他人事ではない、未来の地球の姿なのかもしれません。

 

海面上昇が深刻なインドネシアの状況

海面上昇が深刻なインドネシアの状況

農村の水没が止まらない

海面上昇による深刻な状況を迎えているのはツバルだけではありません。東南アジアに位置するインドネシア諸島では、農村の水没が止まらず多くの農地が失われ、人びとが収入を失い路頭に迷う深刻な状況となっています。

行政の指導に従い、水没した場所でエビなどの養殖を始める農民も少なくありませんが、気象の変動が激しく年度によって収入に差が出てしまい、思うような生活を保持することが難しい状況です。

避難所となっていた学校や公共施設はそのまま放置され、トイレや井戸・お風呂といった水回りは一切使用できません。民家は毎年底上げ工事を行わなければ住める状態ではなく、それも資金が足りず断念せざるを得ない農民も多いのが現状です。

移住することもできない人びとは、水没して悪化していく環境に耐え続けています。

マングローブの急激な減少も原因に?

インドネシアの海面上昇の原因として、マングローブの急激な減少を挙げる声もあります。

マングローブは亜熱帯地域の沿岸に生息する植物。陸と海にまたがって生息しているマングローブは多くの生物に重要な生息環境を与え、沿岸部の安定や津波・ハリケーンなどの被害を防ぐという大きな役割を果たしていました。

しかし、世界規模でのパーム油需要の増加や水産養殖・稲作の増量にともない、多くのマングローブ林が切り開かれてしまいました。これにより、マングローブに保護されていた環境は一変。これまで生息していた生物の姿は消え、失われた自然による脅威に人間が晒される結果となったのです。

こうした危機的状況に、マングローブ林を蘇らせるプロジェクトも始動を始めましたが、経済成長と自然保護の両面からアプローチを掛けなければならないという大きな課題が残されています。

【関連記事:今や日本人に欠かせなくなったパーム油の危険性とは

 

穏やかな海を見ると、とても海面上昇による悲観的な未来を予測することはできません。しかし、これまで人間が追いかけてきた豊かさの裏で起こった大きな波は、確実に押し寄せてきています。

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