地方創生廃校をリノベーション!食事や宿泊ができる新しい施設に生まれ変わる!

廃校をリノベーション!食事や宿泊ができる新しい施設に生まれ変わる!

国民の共有財産である公立学校は、過疎化や高齢化による児童数減少のため、毎年度400件~500件が廃校になっています。これらの7割程度は体育・文化施設または福祉施設として利用され、地域の自然や文化を求めて都会から人が集まる、地方と都会の橋渡しの役目を担っています。

日本の廃校の現状

日本の廃校の現状

少子高齢化が浸透している日本では、児童数の減少により廃校となる施設が毎年度発生しています。廃校のある市町村は、児童数の減少とともに人口自体も減少して予算が確保できないために、取り壊すことも維持することもできず施設が老朽化していくのです。

この状況を改善すべく、文部科学省では『~未来につなごう~「みんなの学校」プロジェクト』と題した取り組みによる、廃校施設情報の公開と活用方法・利用者の募集、補助制度の紹介が行われています。

日本の廃校数

文部科学省の「廃校施設活用状況実態調査」によると、1992年度~1999年度には200件、2000年度~2002年度には300件、2003年度~2011年度には500件もの公立学校が毎年度廃校となっています。

公立学校の年度別廃校発生数

年度1993年2002年2003年2004年2005年
発生数189件341件421件577件457件
年度2006年2007年2008年2009年2011年
発生数426件465件460件529件474件

廃校の現状

廃校となった公立学校は、その7割程度が学校機能を活かした「教育施設」「体育施設」「福祉施設」として活用されています。

2002年度~2011年度までの廃校4709件のうち、撤去されずに残されているのは4222件で、その活用率は以下のとおりです。

活用されている活用されていない
予定あり予定なし
2963件
(70.2%)
259件
(6.1%)
1000件
(23.7%)

なお、活用される予定のない理由は「要望がない」と「老朽化している」が多いものの、「立地条件が悪い」「財源が確保できない」という廃校になった原因と共通する部分もあります。

 

廃校の有効活用に向けた取り組み

廃校の有効活用に向けた取り組み

毎年度500件前後が発生する廃校の7割はほかの施設に生まれ変わっていますが、活用の予定すらない場所もまだ多く残っています。これら未活用の廃校を地域文化の中心として再生していくことは、地域自体の再生にもつながります。

廃校施設の活用状況

教育委員会所管の「教育施設」や「体育施設」として利用されることの多い廃校の活用用途は、2016年5月時点の文部科学省調べによると、以下のとおりとなっています。

用途割合
学校(大学を除く)33.9%
社会体育施設21.4%
社会教育施設14.2%
福祉施設8.9%
企業などの施設・創業支援施設7.8%
庁舎など
5.6%
体験交流施設5.1%
備蓄倉庫2.1%
大学0.7%
住宅0.3%

~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクトとは

少子化や地方の過疎化・市町村合併により廃校の数が増加していますが、廃校の活用方法が分からずそのままになっている建物も多く存在します。

そこで、文部科学省は『~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト』を立ち上げ、全国の学校法人や民間企業が廃校を簡単に見つけられるよう、ホームページ上で活用されていない廃校の情報を集約して配信しています。

これにより、「廃校の活用をしようと考えているが、活用したい人が見つからない」、「廃校を活用したいと考えているが、活用できる施設が見つからない」という両者のニーズを同時に解決できるようになりました。

一方で、文部科学省は廃校施設などの活用にあたり、利用可能な補助制度も制定・紹介しています。さらに、公共の施設である公立学校施設の転用に必要だった手続きを容易にする制度改革を2008年に実施、ほかの地方公共団体や社会福祉法人などへの無償譲渡が報告のみで可能になったことも廃校活用に役立っています。

 

廃校を利用したおすすめ施設

廃校を利用したおすすめ施設

文部科学省が行っている「廃校リニューアル50選」事業に紹介されている廃校活用の成功事例を紹介します。

泊まって遊ぶ学校 四万十楽舎

高知県西土佐村にある「四万十楽舎」は、過疎化にともなう児童数の減少により1998年に廃校となった中半(なかば)小学校を利用している、宿泊および自然体験学習を中心とする文化研修施設です。

この施設は、1881年に開校して1982年に建て替えられた鉄筋コンクリート3階建ての校舎を利用しており、国道441号線沿いにあること、グラウンドを利用した広い駐車場も用意されていていることにより、交通アクセスに優れた施設と言えます。

また、2段ベッドを設置して宿泊可能にした教室と、そのまま校内放送に使用できる放送室、そして、大勢が集まって食事のできる食堂があるため、集団行動に適した施設です。

「泊まって遊ぶ学校」というキャッチフレーズからも分かるように、さまざまな体験メニューが用意されています。

生活に密着した体験メニュー

木の伐採・木工教室・蒟蒻づくりなどがあり、食事は四万十川の幸いっぱいの郷土料理を食堂でいただくことが可能です。

自然体験メニュー

四季それぞれの四万十川の自然を満喫できるカヌーツーリングやシュノーケリング体験、沢歩きや川釣りが可能です。

そして、この施設の大切な役割は、これらの活動を通して地域の人と訪れる都会の人とを結び付ける、ということです。

星ふる学校 くまの木

栃木県塩谷町にある「星ふる学校 くまの木」は、過疎化による児童数の減少により1999年に廃校となった熊ノ木(くまのき)小学校を利用している、宿泊型体験学習施設(農林業・自然観察・伝統工芸・文化・郷土料理体験)です。

この施設は、1874年に開校してから124年間学校として利用されていた木造平屋2階建ての校舎で、直径3.5mの天体ドームに口径35cmの望遠鏡を備えた、天体観測に適した施設です。なお、施設の愛称である「星ふる学校」は、2000年度の冬季全国星空継続観察において旧熊ノ木小学校跡地での観測データが1位になったことにより決まりました。

ここでは、教室に泊まり、食堂で地元産の食材を使った料理を食べ、里の資料館で塩谷町の歴史を学ぶことができます。体育館でスポーツやレクリエーションに汗を流すのも良いですし、周辺の自然を堪能するのも良いでしょう。

三代校舎ふれあいの里 おいしい学校

山梨県須玉町にある「三代校舎ふれあいの里」は、過疎化・高齢化による児童数の減少により1985年に廃校となった津金(つがね)小学校を利用した、レストラン・宿泊施設・温泉施設・特産品直売所・パン販売所です。

明治・大正・昭和の三つの時代に建てられた校舎はそれぞれ、明治校舎・大正校舎・昭和校舎と呼ばれています。

明治校舎

木造3階建ての明治校舎は1875年に設立された津金小学校で、白と青のコントラストが美しい明治時代そのままの西洋を真似た和風建築の校舎です。

町の歴史資料館とカフェとして利用され、昭和初期を再現した教室には実際に使える足踏み式オルガンや手回し式電話機があります。

大正校舎

木造平屋建ての大正校舎は1924年に建てられた津金尋常小学校で、雨天時には朝礼を行うことのできる広くまっすぐな廊下が特徴です。

農業体験施設として利用され、そば打ちやほうとう打ちなどの体験、周辺の農地を利用した田植え、稲刈り、野菜の収穫が楽しめます。

昭和校舎

鉄筋コンクリート2階建ての昭和校舎は1953年に建てられた津金中学校で、廃校前に使われていた机が落書きもそのままに残されています。昭和校舎の裏には1955年に建てられた木造の体育館も。

また、観光施設「おいしい学校」として地元特産品の直売所と宿泊施設があり、アルマイトの食器に先割れスプーンで給食を食べることができます。

 

児童数減少により一度はその役目を終えた「学び舎」は、近隣住民の交流の場としてだけではなく、特色あふれる地域の自然と文化を学べる宿泊・研修施設として、文部科学省の支援によるリノベーションを経て活用され続けています。

そして、これからも地域と時代のシンボルとして、卒業生の思い出とともに地域に根ざした活動が続いていくことでしょう。