地方創生地域活性化に向けた日本国内でのさまざまな取り組み

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日本各地の市町村で活発な活動を見せている地域活性化への取り組み。目指す先にあるのは、活気にあふれたふるさとの姿です。地域活性化へ向けたさまざまな取り組みについて、詳しく解説していきます。

なぜ地域活性化が必要なのか?

なぜ地域活性化が必要なのか?

少子化高齢化・シャッター通り…地域活性化という単語を聞くと必ず思い浮かべてしまうのは、このような暗い話題とさびれた町のイメージです。馴染みのない地域ではつい無関心になってしまう地域活性化の問題ですが、ここには他人事では済まされない、国の将来を左右する大きな課題があるのです。

活気にあふれた地域には、「人」「産業」「金」という大きな三つの要素がバランスよく存在しています。生活に必要な産業があり、地域内の経済循環が整っている町には多くの人が集まって活性化が進みます。やがて地域内での産業は外部地域の流通へとつながり、経済の流れが太くなってお互いの地域が潤い、さらに大きな発展をしていくのです。

この流れを作り出すためには、より多くの地域が活性化を図る必要性があります。一部の大都市に経済の流れが集中している現代社会では、周辺地域から一方的に経済的流出が行われるだけとなってしまうため、やがてわずかに残っていた流通もストップして大都市そのものも失われることになります。

国という大きな体を支えるためには、大切な手足となるどの地域も損なわれてはいけません。それぞれが元気に活動しているからこそ、国はより豊かに発展していき、ひいては国民全体の利益へとつながっていきます。地域活性化には、こうした全国規模の経済的な流れを復活させるという大切な課題が課せられているのです。

 

地域経済循環の取り組み

地域経済循環の取り組み

これまでの経済循環とは違った視点を取り入れ、新しい地域循環の形を構築するための動きが日本各地で始まっています。

地域経済循環構造とは

住んでいる地域で働き、生産により得られた所得(給料)を地域商店で消費して経済を循環させていくことを「地域経済循環構造」と言います。かつて活気のあった地方地域ではこの循環がしっかりと確立され、人々の生活を支えてきました。

しかし、従来構築されていたこの構造は、時代とともに大きく衰退していくこととなります。その原因として以下のような現状が挙げられます。

  • 公共事業の大幅削減や、地域産業の要となっていた企業の海外移転
  • 大型ショッピングセンターなどの郊外進出による地域商店の衰退
  • 非正規雇用の増加による所得の低下

「働く場所がなくなった」「働く形態に変化が起こり所得が低下した」「人が流れていき地域内の消費が減少した」という現実は、地域経済循環が大きな影響を受け、構造そのものが機能しなくなったことを端的に示しています。

この現状から抜け出すためには、これまでの地域経済循環構造とは違った新たな視点を取り入れ、新しい地域活性化へつながる構造を構築していくことが不可欠となったのです。

地域経済循環構造の構築における利点

新たな発想で取り組まれる地域経済循環構造の構築には、以下のメリットが挙げられます。

  • 地域性のある産業の確立で生み出される雇用の増大
  • 各地域の特性を活かした生産物や観光業による経済の活発化

これらのメリットから見えてくるのは、「ふるさとの持つ特徴を見直してブランドとして経済に取り入れる」という動きです。地方地域の持つ魅力をそのまま活かして産業に結び付けるという新たな視点は、これまでの経済循環にはなかった大切な要素であり、それぞれ真似することのできない独自性を持っています。

各地域の持つ特徴がそのまま経済へとつながり、唯一無二の地域ブランドが地域同士の経済ルートでさらに太く流通していく。「ふるさと」という揺るぎない根幹から構築されていく地域経済循環構造には、経済を通したふるさとの復活という大きな利点も含まれているのです。

島根県海士町(あまちょう)の取り組み

島根県海士町。島根半島の沖合にある人口2400人という小さな島が、いま地方創生のお手本として大きな注目を集めています。海士町は「公共事業で成り立ってきた島」でしたが、過疎化・少子化・高齢化という三重の危機的状況に立たされ、大きな決断をすることとなったのです。

海士町は「島をまるごとブランド化する」という独自性に富んだ将来のビジョンをしっかりと見据え、それに沿った案を実行していきました。

  • 行財政改革による職員給与の大幅カットでの財源確保
  • 島の特産物を活かした商品の開発と販売ルートの開拓
  • 地域外からの島留学や移住の支援
  • 積極的な交流と「流されない」島の独自性

まずは、現在ある財源をしっかりと「守る」こと、島の特産物を商品化して島外地域に売り込んで「攻める」こと、この二つをしっかりと「続けていく」こと。この三つの考えを柱とした地域活性化の活動は小さな島に大きな変化をもたらし、現在も進行中です。

 

定住促進の取り組み

定住促進の取り組み

地域活性化の核となる「住人」。地域の人口減少を食い止めるために行われている定住促進の取り組みを紹介します。

島根県邑南町(おおなんちょう)

広島との県境にある邑南町は、山間にある自然豊かな町。人口約1万人という小さな町が、「子育て村構想」と「A級グルメ」という地域活性化へ向けた活動により、いまU・Iターンを希望している人々の注目を集めています。

2010年の国勢調査において、邑南町は人口減少の数値が大幅に増えていることに危機感を持ち、住人の意見を募りました。そのなかで見えてきたのが「若年層の子育てに対する不安の声」。医療・保育の面での金銭的負担により町を出る家族が増えていることに着目した邑南町は、「日本一の子育て村構想」を立てて施策を展開していきました。

特に注目されたのは、全国初となった「第二子以降の子供の保育料の無料化」と「中学校卒業までの医療費の無料化」です。この思い切った施策は功を奏し、全国の地方自治体の先駆けとして大きな話題となりました。

その後、邑南町では子育てに関する全ての面で金銭的負担を和らげる政策を次々と打ち出していき、名実ともに「子育て村」として認識されるようになります。

さらに、邑南町は子育てで移住してきた人が定住できるよう、特産品を使った料理を提供するレストランや産業を次々と開業。「A級グルメ」と銘打ち、それに携わる人を「ソムリエ」として受け入れることで、U・Iターン移住者を呼び込むことにも成功しました。

子どもを産み育て、安心して働く環境を整えていくその発想力と行動力は、全国の自治体が地域活性化の手本にするところとなっています。

 

地域コミュニティー活性化への取り組み

地域コミュニティー活性化への取り組み

地域活性化を成功させるためには、そこに住む住人の協力が不可欠です。住人が主体となっている地域コミュニティー活性化の取り組みを見てみましょう。

埼玉県秩父市

埼玉県秩父市では、民官一体となったボランティア活動や商店街主催の地域活性化運動が盛んに行われています。みやのかわ商店街振興組合は有償ボランティアバンク「おたすけ隊」を設置しており、誰でも一時間800円でボランティアを派遣してもらうことができます。登録されたおたすけ隊員が組合より派遣されるシステムとなっており、隊員はボランティアを行った時間を一時間500円相当の地域振興券「和同開珎」と交換できます。

みやのかわ商店街では、このほかにもナイトバザールと呼ばれるイベントが20年以上続けられています。ナイトバザールのきっかけとなったのは、「地域消費者の生活習慣が夜間へと移行している点」に気付いたことでした。もともと秩父には「秩父夜祭」と呼ばれる祭りがあり、これがヒントとなって始められたのがナイトバザールです。

参加者を飽きさせないように毎年アイデアを出しながら工夫を凝らし、現在では地域の交流の場としてなくてはならない大切なイベントへと成長しています。

 

地域活性化は、そこに住む人々の活き活きとした姿があってこそ可能になるものでしょう。生活に関わる経済・環境・人とのつながり、これらを育み続けることが地域活性化を成功させる大切な要因となっています。