舗装に使用されるアスファルトの環境への取り組み

舗装に使用されるアスファルトの環境への取り組み
ノアの箱舟の防水材やバベルの塔の接着剤として歴史に登場するアスファルトは、道路舗装に多く使われ、太陽熱を吸収しやすいことからヒートアイランド現象の原因ともされていますが、製造・輸送・施工・廃棄段階での環境配慮が進み、リサイクル率がほぼ100%に達したエコ材料です。

アスファルトとは

アスファルトとは
(写真:photoAC)

アスファルトは古代ギリシャ時代に建築物のレンガを固定するために接着剤として用いられていたことから、「倒れない」という意味を語源として名付けられました。粘度が高い液体であるため常温では飴のように固体に似ている一方で、温めると流動化し、形が作りやすい性質があります。このことから道路の舗装などに使われています。

アスファルトの原料

アスファルトには天然アスファルトと石油アスファルトがあり、古代ギリシャで利用されていたのは天然アスファルト、日本で一般的にアスファルトと呼ばれているのは石油アスファルトです。

石油アスファルトはその名のとおり石油を原料として生成されます。原油からガソリンや軽油、重油などを取り除いたものがアスファルトになります。そして、天然アスファルトも自然界で同じような反応が起こって生成されたものです。

アスファルトの主な利用方法

道路舗装材としてのイメージが強いアスファルトですが、縄文時代にはすでに土器や土偶の接着剤・防水材として利用されていたことを示す遺跡も見つかっています。

一般的に「アスファルト」と呼ばれている道路舗装材は、アスファルトを接着剤として利用した混合物です。これは、砂利や砕石にセメントを混ぜて作るコンクリートに対してセメント代わりにアスファルトを混ぜて作ったもので、アスファルトは10%程度しか含まれていません。コンクリートより強度は落ちますが、高価なセメントを使わない分だけ材料費が安くなるため、多用されています。

道路舗装材として使われるコンクリート・セメント・モルタル・アスファルトのなかで最も価格が安いのがアスファルトで、一般にセメントの割合が高くなると価格が上がる傾向にあります。

また、防水性能を生かしてアスファルトルーフィングとしても広く利用されています。これは、建設中の家の屋根に乗っているのを目にすることが多い、アスファルトの染み込んだ黒い紙のことです。アスファルトルーフィングは、1923年の関東大震災以後に広く用いられるようになりました。

 

アスファルト舗装と土間コンクリート舗装

アスファルト舗装と土間コンクリート舗装
(写真:photoAC)

アスファルト舗装は、一般道路に使用されるだけではなく、私道や駐車場の舗装に使われることがあります。その利点を、同様の使い方をされる土間コンクリート舗装と比較しながら見ていきましょう。

アスファルト舗装

砕石や砂にアスファルトを混ぜたアスファルト混合物を150度〜160度に熱して敷きつめ、平らにならして使用します。50度以下になれば完成となり、養生期間(硬化するまでコンクリートを保護する時間)が必要な土間コンクリートに比べて工期の短縮が可能です。

また、コストも安く静音性や排水性にも優れています。しかし、強度が弱くひび割れや凹みができやすい欠点があります。

土間コンクリート舗装

砕石や砂にセメントを混ぜて水を加え、化学反応で固めたものです。化学反応のため、アスファルトを接着剤として固めたものより強度が高くなります。ただ、土間コンクリート舗装は地面を支えにしたコンクリート構造物のため、通常のコンクリート床のような強度は期待できません。

施工にあたっては、型枠や鉄筋が必要な土間コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べて高価であること、一週間程度(セメントの種類、温度などで変わる)の養生期間が必要で工事期間が長くなることなどの欠点があります。

アスファルト舗装と土間コンクリート舗装はどちらが良いの?

アスファルト混合物は劣化や摩耗が起こりやすいために定期的なメンテナンスを必要としますが、熱して元に戻せることで補修は容易です。また、温度変化による膨張収縮も施工後の空隙が吸収するため、昼夜や季節による温度差が激しい場所に適しています。

コンクリートは強度が高く摩耗に強いので長持ちします。面積が広い場合は温度差による膨張収縮を吸収するための目地を設ける必要がありますが、家庭用の駐車場程度であれば不要です。アスファルトに比べて工期が長くなる欠点も、家庭用であればそれほど問題にはなりません。また、塩害には弱いので海岸沿いの地域には向きません。

どちらにも長所と短所があるため、可能な場合は周辺の家庭がどちらを採用しているのか確認して、その土地に合わせた施工方法を選択すべきです。

 

アスファルト混合物の環境への取り組み

アスファルト混合物の環境への取り組み
(写真:photoAC)

アスファルトは撥水性が高く、雨水が地面に染み込まないために地下水が枯れます。また、日光による表面温度の上昇が著しく、ヒートアイランドの原因になるなど環境面で課題の残るアスファルト舗装に対しては、環境に配慮するための研究が進められています。

地球温暖化への対策

アスファルト混合物は製造・輸送・施工・廃棄の各段階で二酸化炭素が排出されていますが、その多くは流動状態を保つために使用されているため、製造温度を下げることで削減できます。

製造温度は、中温化剤を用いることで160度とされる通常温度より30度程度下げることができ、さらに水を潤滑剤として用いる弱加熱技術を併用することで、これを100度以下とすることができます。

そして、この技術を採用することにより、製造時の二酸化炭素排出量が低減できるばかりではなく輸送時や施工時の温度も下げることができるので、二酸化炭素排出量の削減につながります。

さらに、常温で扱えるようにした「アスファルト乳剤」という技術もあります。これはアスファルト微粒子を水中に分散させる技術で、戦後の復興期に簡易舗装の方法として発達しましたが、舗装の強度が求められるようになり衰退していきました。

しかし、現在もアスファルト施工前の路盤とアスファルト混合物を接着する役割として利用し続けられています。

騒音・振動問題への対策、リサイクルへの取り組み

アスファルト舗装は、コンクリート舗装に比べて弾力性があり振動対策になることや、施工後は多孔質になり騒音を吸収する働きもあることでも知られています。

この性質をさらに向上させた「低騒音舗装」という技術も開発されており、通常のアスファルト舗装の空隙率が4%程度なのに対して、これを20%程度まで向上させることで騒音の吸収率を高めています。

上記の舗装は、追加効果として雨水が浸透しやすくなるために「排水性舗装」とも呼ばれ、大雨の際に路面上の水位を下げる効果があり、ハイドロプレーニング現象※による事故を防ぐことにもなります。

また、痛んだアスファルト舗装は撤去されて再生骨材として利用されますが、破砕や再生用添加剤による軟化などの加工が必要になることが課題でした。

これを解決する「路上表層再生工法」は、舗装路面を削り、新規のアスファルト混合物と混ぜ合わせることで、新規のアスファルトの製造・輸送にかかる二酸化炭素の排出量を削減するものです。この取り組みの結果、アスファルトのリサイクル率は99.5%(2012年建設副産物実態調査)に達しています。

※タイヤと路面の間に水が入り込み、ハンドルやブレーキが利かなくなる現象

 

神話の時代から人類が利用してきたアスファルトは、ほぼ100%リサイクル可能なエコ素材として、道路舗装になくてはならないものになっています。

技術革新により吸音性や排水性といった環境性能を備えたアスファルトは、今後どのような発展を見せるでしょうか。

おすすめ記事