社会最近よく耳にする「NPO」とはどのようなもの?

最近よく耳にする「NPO」とはどのようなもの?

地域の課題に密着した活動から地球規模での活動まで、多種多様な活動を行う組織が存在するNPO(非営利組織)ですが、そもそも「非営利とは?」「職員の収入は?」「どうしてそんな大きな組織が必要なの?」といった疑問が次々と出てきます。

NPOとは

NPOとは

NPO「非営利組織:Nonprofit Organization」は、さまざまな社会的貢献活動を利益を目的とせずに行う組織(政府関係や宗教関係などは除く)のことで、

  • 政府や自治体が行おうとすると多くの同意が必要となり実現しにくい社会活動
  • 企業が行おうとしても利益の得られる見込みがなく実現しにくい社会的なサービス

などが該当します。

「非営利」とは?

「営利」との違いは、組織がその活動により得た利益を出資者に分配せず活動の資金に充てることにあります。なお、NPOが利益そのものを得てはいけないということではありません。

また、NPOは資産を分配することもできません。ですから、NPOを解散する場合には資産を国や地方自治体に寄付しなければなりません。

NPOとNGOの違い

NPOと略称が似ている活動団体にNGOがあります。NGO(非政府組織:Non Governmental Organization)は、国連の諸機関と協力関係にある政府以外の組織のことです。その多くは非営利組織であるためNPOの一種とされていますが、営利組織であってもNGOに該当することがあります。また、日本においてはNGO法人の制度がないため、多くのNGOはNPO法人として活動しています。

NGOは、国連では加盟国の利害対立により解決できないでいる国際問題に対して、国境や宗教の壁を越えて取り組む組織が必要とされたために誕生しました。そのため、一般的には国際的な分野で活動する組織がNGOと呼ばれていますが、正式には国連の経済社会理事会にオブザーバーとしての参加資格を持つ団体のことを指します。

ボランティアとの違い

非営利活動はボランティア活動とは異なるものです。ボランティアはあくまで個人の活動で、集まって活動していたとしても個人の意思が優先されます。

それに対してNPOは組織です。「活動方針」や「活動目標」があり、活動の範囲も決まっているため個人の裁量で自由に判断をすることはできません。

また、NPO法人の職員には給料が支払われます。ただ、「ボランティアは無償労働」という理解も誤りで、ボランティア活動であっても規模が大きくなれば専任の人材が必要になり、給料が出されることもあります。

 

NPOとNPO法人

NPOとNPO法人

社会的信頼の確保や契約行為の実施および活動の継承の目的で、任意団体のNPOをNPO法人化することがあります。

NPO法人とは

NPO法人は、特定非営利活動促進法(1998年12月施行)の認証を受けた法人のことです。NPO法人が行う活動として定められた「特定非営利活動」は、以下の20分野となります。

・保健、医療又は福祉の増進を図る活動
・社会生活への教育を促進する活動
・まちづくりの推進を図る活動
・観光の繁栄を図る活動
・農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
・学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
・環境の保全を推進する活動
・災害地への救援活動
・地域の安全を保守する活動
・人権の擁護又は平和の推進を図る活動
・国際協力を推進する活動
・男女共同参画社会(男女が共にあらゆる分野で活躍のできる社会)の形成を促進する活動
・子どもの健全な育成を図る活動
・情報化社会の活用・発展を図る活動
・科学技術の向上を図る活動
・経済活動の活性化を図る活動
・職業能力開発の取り組み又は雇用機会の拡張・充実を支援する活動
・消費者の保護を図る活動
・上記に挙げた活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
・上記に挙げた活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

任意団体を含むNPOの数を把握することはできませんが、2017年11月末時点の内閣府の調査では、特定非営利活動促進法に基づく認証法人は51,779団体あることが発表されています。

なお、法律で認められたNPO法人には「認証法人」と「認定法人」があります。

  • 認証法人:特定非営利活動促進法による認証を受けた法人
  • 認定法人:認証法人のうち、客観的な基準で公益性が高いと所轄庁が認めた法人

認定NPO法人とは

認定NPO法人はNPO法人への寄付を促すために設けられた制度で、寄付した側が税制上の優遇措置を受けられます。

また、NPO法人のスタートアップ支援を目的とする制度に「特例認定制度」というものがあります。設立後5年以内かつ運営組織および事業活動が適正であり公益の増進に役立つ、として所轄庁が認定した法人に税制上の優遇措置を与えるものです。

認定法人は、2017年11月末時点の内閣府調査では1056団体となっています。

NPO法人の給与事情

内閣府発表の「平成27年度特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、NPO法人の財政状況は、収益合計の中央値が2093万円なのに対して平均値が4478.6万円となっており、法人によりその収益に格差があることが分かります。

調査結果の詳細を見ると、収益が1億円を超えている法人が11.2%ある一方で100万円以下の法人も11.0%あり、やはり収益格差が存在します。給与についての正確なデータはありませんが、年収200万円~300万円が国内での相場と考えられます。

また、NPO法人は「役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること」と決められています。しかし、給与を受けられる人数自体に制限はないため、残りの3分の2の役員は職員を兼務することで給与所得を得ているケースが多くあります。また、職員の他に顧問を置いて給与を支払っている場合もあります。

中央値
値を小さい順(または大きい順)に並べたときに中央にくる値。データに偏りがない場合には中央値と平均値はほぼ同じ値となる

 

NPO法人の実際の活動例

NPO法人の実際の活動例

内閣府NPOホームページでは、国、地方公共団体によるNPO支援・協働等の施策情報を発信しています。そこから例として3つの法人を紹介します。

かものはしプロジェクト

東京都渋谷区に本部を置く「特定非営利活動法人かものはしプロジェクト」は、カンボジアで子どもの人身売買を防止する取り組みを行っています。警察と連携した犯罪の摘発強化、大人への就業支援による子どもの教育の促進を行い、売買の連鎖を断ち切る活動を行っています。

この法人は2004年9月に設立認証を受けており、東京都生活文化局都民生活部管理法人課の所轄となっています。

生活自立研究会

千葉県南房総市に本部を置く「特定非営利活動法人生活自立研究会」は、グループホームと作業所の運営による障がい者の社会的自立を目指した活動を行っています。この法人は2004年3月に設立認証を受け、千葉県環境生活部県民生活・文化課の所轄となっています。

作業所では、ひと月あたり3万円から5万円の収入が得られることを目標として農産加工品などの自主製品の製造・販売を行っています。

生活サポートひまわり

東京都板橋区に本部を置く「特定非営利活動法人生活サポートひまわり」は、居宅介護支援、訪問介護および障害福祉サービスにより、地域の人びとが相互扶助、協力、補完し合い大切な時間を共に過ごすことで地域文化、社会教育が発展することを目指して活動しています。この法人は2002年1月に設立認証を受け、東京都生活文化局都民生活部管理法人課の所轄となっています。

居宅介護支援ではコミュニケーションを重視し、ケアプランの作成や各種手続の代行、訪問介護では自宅で安心してゆったりと生活できるように介護や日常生活のサポート、障害福祉サービスでは、自立に向けて利用者はもちろん家族にも喜ばれる支援サービスを行っています。

 

非営利で活動を行っているNPOは多くの種類の組織に適用されています。その活動の範囲は、地域に密着するものから地球規模のものまでさまざま。しかし、財務状態の格差は大きく、必要な人材確保のために使用できる報酬にも開きがあるようです。