環境世界各国で起きているさまざまな異常気象

世界各国で起きているさまざまな異常気象

異常気象は、日本だけでなく世界各国で起きています。これらの異常気象が発生する要因は何なのでしょう。本記事では、異常気象の原因と、今起きている問題について考えます。

日本で起きている異常気象

日本で起きている異常気象

暑く寒い、最近の日本

2013年夏、日本列島を例年にない猛暑が襲い、この年の8月12日には高知県四万十市で41.0度という国内の観測史上最高気温を記録しました。一方、2018年1月には数年に一度と言われた強い寒気の影響で東京でも20cmを超える積雪が観測されたほか、さいたま市ではマイナス9.8度という観測史上最も低い気温が記録されました。

近年、夏が来る度に猛烈な暑さとなり、熱中症で救急搬送される人も増えています。そして、冬になると今度は耐え難い寒さに震えるなど、日本の気象は暑さと寒さが極端になる傾向にあります。

身近な異常気象「熱帯夜」

夏日、真夏日、猛暑日、熱帯夜の定義

夏の暑さを測る目安として、気象庁が設定している「夏日」「真夏日」「猛暑日」そして「熱帯夜」の区分があります。夏日、真夏日、猛暑日はその日の最高気温によって、熱帯夜は最低気温によって区分されます。その基準は以下のとおりです。

  • 夏日:日最高気温が25度以上の日
  • 真夏日:日最高気温が30度以上の日
  • 猛暑日:日最高気温が35度以上の日
  • 熱帯夜:日最低気温25度以上の日(本来は夜間の最低気温が25度以上の日を指す)

気象庁による東京での観測結果から、それぞれの区分がどれほど変化しているかを見てみましょう。

夏日

夏日は1914年に107日でしたが、50年後の1964年には109日、さらに50年後の2014年には125日となっています。1964年から2014年にかけてやや増加している傾向が見られます。

真夏日

真夏日は1914年が54日、1964年が52日、2014年が45日と、あまり変化していません。

猛暑日

猛暑日については1914年は該当する日が一日もありませんでしたが、1964年に1日、2014年には5日と増加傾向にあります。

猛暑日の日数の変動は大きく、国内最高気温が更新された2013年は12日を数えていますが、その前年の2012年は6日となっています。しかしながら、最高気温が極端に高くなる日が増えている様子がうかがえます。

熱帯夜

1914年の熱帯夜に該当する日は5日でしたが、50年後の1964年には12日、さらに50年後の2014年には29日となっています。

なお、東京の熱帯夜日数は最も多い年で2010年の56日で、その後は2012年まで50日近くの状態が続いたものの2014年以降は30日以下となっており、近年は減少傾向にあります。

熱帯夜の原因

熱帯夜は、特に大都市圏で発生頻度が高まっています。

その原因は、エアコンなどの空調機器や燃料を燃やすことで生じる人工排熱の増加、地表面のアスファルトやコンクリートなどの人工の被覆物の増加、中高層の建築物の過密化、緑地や水辺が減ったことによる冷却機能の低下と喪失などが考えられています。

東京は過去、夜になると東京湾から涼しい海風が内陸部に流れ込むことで気温が下がっていたと言われています。しかし、開発によって建物が密集し、海風が入りにくくなりました。ここに熱源が増えたことも加わり、気温が下がりにくくなっているのです。

熱帯夜で増える「夜間熱中症」

熱帯夜になると、熟睡できないために心身の疲労が取れにくくなります。そのため、日中の集中力低下から仕事における効率の低下・事故の発生につながる恐れも指摘されています。

さらに、夜間に熱中症を発症する「夜間熱中症」も増えています。

東京都が2013年7月から8月にかけてまとめたデータによると、熱中症で死亡した人の30%が夜間(午後5時〜翌朝5時)の発症でした。その多くはエアコンなどの冷房機器を使用していなかったとみられています。

夜間熱中症を防ぐためには、暑さを我慢せずにエアコンを使用し、水分をこまめに摂取するなどの対策が必要です。

 

一度は耳にしたことのある「エルニーニョ現象」

一度は耳にしたことのある「エルニーニョ現象」

エルニーニョ現象・ラニーニャ現象とは

異常気象の発生の要因として指摘されているのが、エルニーニョ現象とラニーニャ現象です。

エルニーニョ現象とは、太平洋の赤道付近の日付変更線付近から南米ペルー沿岸にかけての海面水温が平年より高くなる現象で、この状態が一年程度続くとエルニーニョ現象が発生したと認定されます。

一方のラニーニャ現象は、エルニーニョ現象とは反対に同じ海域の海面水温が平年より低くなる現象を指します。

エルニーニョ現象とラニーニャ現象が発生すると、太平洋沿岸のみならず地球規模での異常気象が引き起こされると言われています。

2014年夏から2016年春まで、2年近くエルニーニョ現象が続きました。この時、2016年に日本は猛暑となって年間の平均気温が過去最高を記録したほか、世界的な異常高温がもたらされました。

そして、世界的な高温は以下のようにさまざまな影響を及ぼしました。

  • ヤシの実が不作となり、「パーム油」の収穫が落ち込んだ
  • 魚の回遊域が変わり、漁獲量が減った
  • 植物の二酸化炭素の吸収量が減り、大気中の二酸化炭素濃度が過去最高を記録した

エルニーニョ現象が起きる原因

エルニーニョ現象とラニーニャ現象はなぜ起こるのでしょうか。その答えは、太平洋の熱帯付近で吹く東風「貿易風」にあります。

この海域では東風が常に吹いているため、海面近くの暖かな海水が太平洋の西側(インドネシア方面)に吹き寄せられています。一方の東の南米沖では、この東風と地球の自転の作用によって、海の深いところから冷たい海水が海面近くへと上っています。

海水温が太平洋の西側で高く、東側で低いというのが平常の状態です。この状態の時、海水温が高い太平洋の西側では海水が大量に蒸発して大気中に大量の水蒸気として送り込まれるため、積乱雲が次々と発生しています。

東風が弱まると、太平洋の西側に集まっていた暖かな海水が東へ広がり、太平洋中部から東部にかけての海面水温が上昇します。同時に太平洋の東側では、海の深くからの冷たい海水の上昇が弱まります。このため、太平洋の西側で盛んに発生していた積乱雲の発生場所が東に移動します。この状態がエルニーニョ現象です。

ラニーニャ現象は、この東風が反対に強まった状態です。海面水温の高いエリアが西側に偏り、太平洋中部から東部の海面水温が平常時よりも低くなります。このとき、積乱雲が盛んに発生する場所は西側のインドネシア近海に移ります。

風と海の流れ、そのバランスの変化がエルニーニョ現象とラニーニャ現象を発生させ、地球規模の異常気象へとつながっています。

エルニーニョ現象による日本への影響

エルニーニョ現象になると、日本では平均気温が高くなる傾向が見られます。

エルニーニョ現象が発生している時、日本の南の太平洋には勢力の強い高気圧が生まれるために夏の暑さが増します。

また、この高気圧の影響で日本の上空を流れる西風「偏西風」の流れが北へ押し上げられます。それによって冬場に大陸から張り出してくる高気圧が日本付近まで届かず、寒気の流れ込みが弱くなって暖冬になると考えられています。

エルニーニョ現象が2014年夏から2016年春まで続いた際は、暖冬となってスキー場が雪不足に悩まされ、夏は気温が上がって猛暑となるなどの影響が出ました。

一方、ラニーニャ現象が発生している時、日本では冬の寒さが厳しくなり、夏も冷夏になる傾向があります。2018年1月に東京で20cmの積雪を記録する大雪が降りましたが、これもラニーニャ現象が要因の一つと考えられています。

 

気候変動による異常気象の例

気候変動による異常気象の例

地球規模で起きている気候変動がもたらした異常気象の例として、東アフリカで深刻化している干ばつの問題を取り上げます。

繰り返される干ばつ

エチオピア、ケニア、ソマリアなどの東アフリカ地域は、繰り返し激しい干ばつに見舞われ、多くの人が深刻な食糧危機に直面しています。

2010年から2011年にかけては「過去60年間で最悪」と呼ばれる干ばつが発生し、ソマリアでは飢きんによって25万人が死亡したと報告されています。

さらに2017年2月から3月にかけて再び大規模な干ばつが発生し、ソマリアでは全人口の半数にあたる620万人が食糧危機に見舞われました。

近隣の国々でも飢きんが発生し、食糧支援が必要な人の数は一時、ケニアで270万人、エチオピアで560万人、南スーダンで490万人と、合計で1000万人を超える人々が危機に直面しました。

一度干ばつが発生すると、飲み水が足りなくなるだけでなく農作物や家畜が育たなくなり、農業に依存して生きている人々の生活の基盤を破壊します。

雨量の極端な減少は土壌中の水分を蒸発させて乾燥化を進行させ、ますます雨が降らない状況を引き起こします。そして、過度に乾燥化した土地が元の状態に戻るまでには長い年月が必要となるのです。

結果的に、水や食糧の不足が地域の政情をますます不安定にします。伝染病も蔓延しやすくなりますが、紛争地帯になってしまうと支援の手も届きにくくなり、人的被害がますます大きくなるという悪循環に陥ってしまいます。

エルニーニョ現象が干ばつを引き起こしている?

干ばつが起こった地域にはもともと、雨季が3月〜6月と10月〜12月の年2回ありました。しかし近年、気温が上昇するとともに雨量が極端に少なくなっているというデータがあります。その要因と考えられているのが、海水温の上昇や断続的に発生しているエルニーニョ現象です。

エルニーニョ現象による干ばつは、レソト、ジンバブエ、マラウイ、アンゴラなどのアフリカ各地で発生していると言われています。

また、干ばつが頻発する東アフリカとは対照的に北アフリカでは激しい雨が増えて洪水が頻発しており、これらの原因がエルニーニョ現象などの気候変動によるものという研究結果もあります。

アフリカは気候変動のリスクに最もさらされている地域であると以前から指摘されていましたが、その脅威が現実のものになりつつあるのです。

 

日本、そして世界で起きている異常気象の発生要因としてエルニーニョ現象とラニーニャ現象が挙げられます。遠い海で起きている出来事が私たちの暮らす場所の気象にまで影響していることに注目しましょう。この地球上で起きていることにさらに目を向け、助けを必要としている人々のことも考える必要があります。