歴史ある日本の伝統工芸益子焼の特徴|美しさはその歴史にあった!

おしゃれな伝統工芸品「益子焼」とは

江戸時代の末ごろから製造が始まった栃木県の伝統工芸品、益子焼。その特徴は、元来の素朴な皿や茶碗だけでなく、洋風の柄や形のデザイン、かわいらしいブローチまで、さまざまな姿形で私たちを楽しませてくれること。実は、その美しさの理由は歴史を振り返ると垣間見えるのです。

益子焼の美しさと歴史との関係

益子焼の美しさと歴史との関係

当初は日用品が中心

益子焼は、栃木県の南東部に位置する益子町で製造されている伝統的な焼き物です。

江戸時代末ごろ、笠間焼でも知られる笠間藩(現在の茨城県笠間市)で修行した大塚啓三郎が益子で焼き窯を築いたことが始まりとされています。当時は、水瓶や火鉢・壺・土瓶など、暮らしのなかで使用されていた日用品が中心に製造されていました。

人間国宝、濱田正司が「用の美」を訴求

当初は日用品が主として製造されていた益子焼ですが、大正時代の1927年に大きな転換期を迎えます。民芸運動を唱える陶芸家で、後に人間国宝となった濱田正司氏が益子町に訪れ「用の美」を訴えかけたのです。

「用の美」とは、「一見すると普通のデザインであっても、一手一手丁寧につくり込まれた日用品にこそ本当の美しさが宿っている」という考え方です。この用の美を基本的な考え方とする民芸運動は、益子焼をはじめ、日本のさまざまな工芸品に大きな影響を与えました。

日用品だけでなく工芸品にも深化

濱田氏も益子焼の製造に協力し、これまでの益子焼にはなかった花器や茶器が作られるようになります。この時代は、単なる日用品から芸術を含んだ工芸品へと見方が変わりはじめた時期でもありました。

その後は、益子焼ののびのびとした作風を学びたいという若い世代の志願者が増え、独自性のあるさまざまな作品が誕生していきます。つまり、現代の益子焼の美しさは、濱田氏が「用の美」を持ち込んだ歴史と密接に関わりがあるのです。

1979年には伝統的工芸品として国から指定され、現在においても多くの窯元が益子町には残っています。さまざまな手法やポップなデザインと融合し、老若男女問わず多くの人を楽しませる芸術作品として今でも輝きを放ち続けているのです。

濱田庄司氏の意志は今も濱田窯に宿る
濱田氏は「用の美」を訴えた後の1930年、益子町に仕事場兼自宅(濱田窯)を設け、1931年に初窯を実施しました。1941年には本格的な作業場が完成することで多くの弟子が濱田氏の元に集まります。その後も濱田窯は拡大を続け、ついに濱田氏は日本を代表する陶芸家となったのです。その意志は、今でも3代目にあたる濱田友緒氏が受け継ぎ、新たな製品を生み出し続けています。

 

益子焼の特徴

自然な質感

益子焼には、砂気が多いために土特有のゴツゴツとした質感、厚手のために重くて割れやすいといった特徴があります。しかし、その土でできた素朴な質感こそが自然で親しみやすい味わいを生み出しているのです。

益子焼と釉薬は相性good
益子焼で使われる土は気泡を多く含むため、他の物質を加えないことも相まって細工の難易度が高く、その結果、厚手になる傾向があります。しかし、その陶土は石材粉や古鉄粉といった釉薬との相性がよく、味わい深くどっしりとした作品が完成するのです。

独創的な作品が多く存在

民芸運動の影響を大きく受けたこともあり、ほかの焼き物と比べると型にはまらず自由な気風で製造が進められきたため、独創的で味のある作品が多く残っていることも特徴として挙げられます。今でも益子町には、国内外から数百人の陶芸家が集まって活動していると言われているほど。

 

おしゃれでかわいい益子焼を通販で

おしゃれでかわいい益子焼を通販で

独創的で味のある作品が多い益子焼。現在においてもその特徴は受け継がれ、さまざまな作品が生み出されています。そんな益子焼の工芸品を紹介します。

つかもと ドラえもん益子焼

「益子焼のつかもと」は、2017年度の「とちぎデザイン大賞」において最優秀賞受賞した、江戸時代から続く益子焼製造の老舗です。サンリオの「I’m Doraemon」とコラボレーションしたお皿やマグカップは、益子焼の一番の特徴である土味を活かしたモノトーンのシンプルな仕上がり。

焼き物に描かれるドラえもんにも味があり、非常にかわいらしくなっています。

よしざわ窯 益子焼 白いスープ皿

女性メンバーを中心にアイデアを出し、益子焼の製造を行っているのは「よしざわ窯」です。よしざわ窯が作る多くの焼き物は女性ならではのアイデアが光り、シンプルで使いやすくワンポイントの模様やかわいいイラストが特徴的です。

「白いスープ皿」は、広めの外枠が付いた少し厚手の自然な色合いのスープ皿。完全な白ではなくスープ皿の裏底には土の色合いが残されており、それがワンポイントとなってお皿の味わいをグッと引き立てています。

厚手の仕上がりなので温かみのある雰囲気が出ており、スープを注げばリッチな気持ちで食事を楽しむことができるでしょう。

わかさま陶芸 粉引きしのぎ まん丸ティーポット

手作りの温かみを大切にしている「わかさま陶芸」は、素朴で自然な色合いのシンプルな食器を中心に製造を行っています。触り心地も良く素朴でシンプルなデザインは、どんな料理を乗せても相性が良く、料理の見栄えを引き立たせます。

「粉引きしのぎ まん丸ティーポット」も、自然な土の触り心地と色合いが落ち着きを与えてくれる味のある逸品。窯毎に変化があるため、黄色や茶色っぽい色合いなど少しずつ色味も異なります。

ナチュラルなティータイムに抜群の相性を誇るこのティーポットは、通販でも取り扱われています。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。

 

毎年開催「益子大陶器市」

毎年開催「益子大陶器市」

春・秋開催の益子の陶器市

5月のゴールデンウィークと11月の文化の日付近に毎年二度開催されている「益子大陶器市」では、多種多様な作品がある益子焼を一度に楽しむことができます。1966年から100回以上も開催されている、長く愛されているイベントです。

伝統的な益子焼のみならず普段使いの器までさまざまな作品が販売されており、販売店の50店舗に加えて作家のテントが500以上も並ぶ大規模な内容。焼き物だけでなく地元の農産物や特産品の販売も行われ、春秋合わせて約60万人の人出があります。

また、同じく11月に実施されるイベントとして有名なものとしては、徳島県の大谷焼窯まつりがあります。こちらもぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
徳島の生活を支える「大谷焼」の伝統技術と歴史を振り返る 大谷焼の良さ|コラボも魅力の陶器の特徴をご紹介

 

益子焼データベースプロジェクト

益子焼データベースプロジェクト

益子焼を未来へ

町内に在住あるいは事業所のある陶芸家・窯元・ショップ・ギャラリーのデータベース作成し、益子焼業界および益子町の観光振興のために活かしていこうと行政・各団体・作家の有志が集まり、2011年に始まった活動です。

2012年3月に調査そのものは終了したものの、益子焼ポータルサイト「Mashiko-db.net」が開設され、益子焼を中心とするさまざまな情報が公開されています。

伝える・知る・創る

益子焼データベースプロジェクトでは、集めたデータベースを活用して主に以下の活動が行われています。

伝える(情報発信)

集めた益子焼のデータを整理して、陶芸家や窯元、ショップやギャラリー、展示会やイベントなどの情報をポータルサイトやSNSを媒体として発信しています。

知る(情報共有)

メーリングリストや益子焼に関する問い合わせ窓口を開設するなど、益子内の行政・既存の組織・各団体の協力体制をスムーズかつ効率的に行うための体制づくりを行っています。

また、益子焼に関わる地域資源の掘り起こしやイベントの開催、益子焼に関する歴史的な情報を集約して伝統技法や窯業史の保存・記録をするほか、それらの情報の一般公開を行っています。

創る(企画・販路拡大)

一つひとつの店舗を集約化した益子焼の営業を行っています。具体的には、海外をターゲットとした受注システムの構築や益子焼に関するさまざまな企画立案・イベントの補助などです。

益子焼データベースプロジェクトには、伝統的な工芸品である益子焼とITがつながることで、現状にとどまることなく、さらなる飛躍を目指してメンバーが一丸となって取り組んでいます。その動き一つにも、益子焼で大切にされてきた柔軟で自由な発想が表れています。

 

現代においても進化を続ける益子焼。ぜひその手で、伝統的かつ新しい焼き物を感じてみてください。