日常を取り巻くさまざまなハラスメントの現状と対策

日常を取り巻くさまざまなハラスメントの現状と対策
セクハラ、パワハラ、モラハラ、マタハラ…。昨今、さまざまな「ハラスメント」を耳にするようになりました。いまや他人事ではないハラスメントの被害者や加害者にならないために、その現状と対策を考えます。

そもそもハラスメントとは

そもそもハラスメントとは
(写真:photoAC)

企業を揺るがすセクシュアル・ハラスメント

2017年半ば以降、アメリカで世界的な大企業を揺るがす問題が起きています。その問題とは「セクシュアル・ハラスメント(「セクハラ」:性的な嫌がらせ)」。ITの大手企業やメディア企業などのさまざまな業界で問題が明らかとなり、なかには最高経営責任者の辞任にまで発展した企業もあります。

アメリカといえば、企業における女性の管理職の比率が4割以上に達し、同時に権利も保障されて働きやすいという印象があるでしょう。セクハラ行為が法律ではっきりと禁止されていることや、仮に裁判となれば企業側に多額の賠償金が請求される可能性もあることから、セクハラが起きにくいとされていました。

しかし、2017年10月に大手メディアが実施した世論調査では、30%もの女性が勤務中にセクハラを受けたと回答しました。セクハラがイメージ以上に広がっている実態がうかがえます。

ハラスメントとは

「ハラスメント(Harassment)」とは、職場や学校などのさまざまな場所・場面での「嫌がらせ」や「いじめ」を指す言葉です。大阪医科大学では「他者に対する発言・行動などが本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること」と定義しています。

日本でハラスメントという言葉が使われるようになったのは1980年代後半以降のこと。最初に言われるようになったのが「セクシュアル・ハラスメント」で、1989年にこれを理由とした国内初の民事裁判が起こされたことで注目を集め、同年の新語・流行語大賞を受賞しました。

これ以降、性的な嫌がらせを「セクハラ」とする社会の意識が高まり、人権侵害の一つとして認識されるようになりました。

セクハラが世に知られるようになった1989年から30年近く経った2018年1月時点では、この「ハラスメント」に該当する行為は30種類以上と言われるまでに増えています。

 

多く耳にするハラスメント

多く耳にするハラスメント
(写真:photoAC)

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)

「性的な嫌がらせ」を指します。上記でも紹介したとおり、ハラスメントという言葉が日本で定着するきっかけとなったものです。

法律での対応としては、1997年に改正された「男女雇用機会均等法」において女性に対するセクハラ規定が整備されたのが最初です。その後、2007年に「改正男女雇用機会均等法」が施行され、女性労働者に限定されていたセクハラ規定が男性労働者にも適用されるようになりました。

この法律では、セクハラを

職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること

と定義しています。

また、厚生労働省の指針ではセクハラを

・対価型:職務上の地位を利用して性的な関係を強要すること
・環境型:性的な関係は要求しないものの、性的な言動により不快にさせる

の2タイプに分けています。

セクハラによって個人が心理的な苦痛を受けるだけでなく、職場環境が悪化して企業の業績やイメージが低下したり、損害賠償請求によって事業主に対して賠償責任が発生したりする場合もあり、セクハラ対策は企業として必須の取り組みとなっています。

なお、職場におけるセクハラは上司と部下の力関係から生じる場合があり、次に挙げる「パワー・ハラスメント」と結びついているケースも多く発生しています。

パワー・ハラスメント(パワハラ)

職場において、地位や権力を利用して相手に精神的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為がパワハラです。この「パワハラ」は日本独自の造語で、英語ではありません。

厚生労働省は、パワハラを以下の6類型に分類しています。

・精神的な攻撃:同僚の目の前で叱責する、長時間執拗に叱る など
・身体的な攻撃:叩く、殴る、蹴るなどの暴行 など
・過大な要求:明らかに能力以上の成果を要求する など
・過小な要求:閑職に追いやる など
・人間関係の切り離し:隔離する、無視する など
・個の侵害:交際相手や配偶者について必要以上に聞き出す など

2016年に厚生労働省が実施した調査では、「パワハラを受けたと感じた経験がある」と答えた人は回答者のおよそ3人に1人でした。パワハラが多くの職場で広がっている現状がうかがえます。

パワハラが起こった場合、裁判にまで発展するケースが多くなっています。この場合、パワハラを行っていた本人が責任を負うだけでなく、雇用主にも使用者責任や安全配慮義務違反が問われて賠償責任が発生するケースがあり、セクハラと同等かそれ以上の対策が求められています。

なお、パワハラは上司が部下に対して行うことのみを指すわけではありません。部下が上司に対して反抗したり無視したりする「逆パワハラ」も多く行われているのではないかという指摘もあります。しかし、本人が「公にすると管理能力のない上司ということになってしまう」と捉えかねず、表面化しにくいのが実情です。

モラル・ハラスメント(モラハラ)

暴力をともなわず、立場の弱い者に対する言葉や態度による精神的な嫌がらせをすることを指します。職場においてこれを行った場合には上記のパワハラに該当する場合があるため、一般的には家庭などの職場外で行われるものを指します。

特に夫婦間においてモラハラが横行しているという指摘があり、肉体的暴力(DV:ドメスティック・バイオレンス)はないものの、モラハラにあたる精神的な苦痛を受け、それを理由に離婚を望む人も多いとされています。

夫婦間の実例としては、主に以下が挙げられます。

・夫が妻に対して心ないことを言う(またはその逆。以下同様)
・夫が家計を管理し、妻には生活費として必要最小限のお金しか渡さない
・夫のために用意した食事を、理由を付けて食べない
・妻に対して常に見下したような態度をとる
・よほどのことがない限り、外出させない

また、親子間においても上記が見られるという指摘もあり、その場合は虐待と認められることもあります。

ジェンダー・ハラスメント

「女のくせに」または「男なのに」のような、性に関する固定観念や差別意識による嫌がらせを指します。セクハラに類似しており、より広い行為を含むものとして位置づけられています。

ドクター・ハラスメント

病院などの医療の現場において、医師や看護師をはじめとする医療従事者が患者や患者家族に対して行う心ない行為や発言を指します。医療従事者が患者よりも立場が上であると感じられるために起こりがちだと指摘されています。

 

少し風変わりなハラスメント

少し風変わりなハラスメント
(写真:pixabay)

ハラスメントとされるものは数多くありますが、ここで、2017年に話題となった2つのハラスメントを取り上げます。

麺をすする音がハラスメント!?

日本人は、ラーメンやそばなどの麺類を食べる時に「ズズッ」とすする音を出します。この音が「スープは音を立てずに飲む」という習慣を持つ外国人、特に欧米から嫌悪されており、「ヌードル・ハラスメント」であるとの指摘があります。

2020年の東京オリンピックに向けてより多くの外国人観光客を受け入れようとしているため、「食文化とはいえ不快な印象を与えてはならないから、音を立てるのをやめるべきだ」という意見も出されました。

2016年11月に放送された民放の情報番組でこの問題が取り上げられたことによって注目され、賛否両論が巻き起こりました。ただ、本当に外国人の間に「ヌードル・ハラスメント」という意識があるのかは定かではありません。

麺すすり音カモフラージュ機能搭載フォーク「音彦(おとひこ)」

カップ麺を製造している食品会社がこの問題を解決するという商品を開発し、話題となりました。「音彦」と名付けられたこの商品は麺を食べる時に使うフォークですが、ハイテクな機能を持っています。

それは、麺をすする時に出る音を感知すると、ワイヤレス接続されたスマートフォンからすすり音をカモフラージュする音を発してすすり音を打ち消す機能です。名前からイメージできるとおり、この商品はトイレで使われる擬音装置から着想されたものです。

「これで心おきなく麺をすすれる…」かどうかは定かではありませんが、開発そのものは大変真剣に行われました。

現代社会を風刺した「ソーシャル・ハラスメント」

スマートフォンの普及とともに、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)も爆発的な広がりを見せています。老いも若きもSNSを利用するようになって新たに生じたハラスメントが「ソーシャル・ハラスメント」です。

SNS上での投稿に対して、例えばFacebookであれば「いいね!」やコメントを強要すること、友達申請を強制することなどがこれに該当します。

職場の上司がこれらの行為をするとパワハラに該当する可能性もあるため、企業によっては対策として社内ルールを整備するケースも増えています。

 

もしハラスメントを受けたら

もしハラスメントを受けたら
(写真:ぱくたそ)

ハラスメントは誰もが考えるべき問題

人間関係によって成り立ち、またストレスの多い現代社会は、ハラスメントが起こりやすい環境にあると言えます。しかし、それが職場で起これば職場環境を損ない、裁判にまで至ってしまう可能性もあります。

誰もが被害者になり、または加害者にもなってしまう可能性があるのがハラスメントです。もしハラスメントを受けたら、どうすべきなのでしょうか。一般的な対策を、職場を事例として挙げつつ考えてみましょう。

意思表示をする

ハラスメント行為をしている人に対して、やめてほしいと意思表示をします。行っている本人は、それがハラスメント行為であることを認識していないかもしれません。はっきりと意思表示をすることで行為が止まる場合もあります。

周囲に相談する

身近な人に相談をしてみましょう。職場であれば、行為をしている人の上司に相談します。対策がしっかりとなされている職場であれば、上司からの指導が行われるはずです。

記録する

その行為を受けた具体的な日時・場所、また、その行為を誰が見ていたかを記録します。

相談窓口などに相談する

社内に相談窓口がある場合はそこに相談し、ない場合は同僚に相談します。家庭内におけるモラハラの場合は以下の相談窓口が利用できます。

・夫婦間の場合
配偶者暴力相談支援センター、法テラス など(男女とも)
婦人相談所、女性センター など(女性のみ)
・親子間の場合
児童相談所、児童相談センター など(18歳未満の子ども)

企業における予防策

社内でセクハラやパワハラが発生すると企業へのダメージも大きいため、多くの企業で予防策が講じられてきています。

その内容は、以下のようなものが一般的です。

・トップのメッセージ
職場のハラスメントはなくすべきであると明確に示す。
・社内ルールの整備
就業規則等にハラスメントの禁止や処分についての規定を盛り込む。
・実態把握
社内アンケート等で、ハラスメントが実際に起きていないかの把握に努める。
・教育と普及啓発
管理職研修や従業員研修を通じてハラスメントへの理解を深め、普及啓発を行う。
・相談窓口の設置
従業員が相談できるよう、相談窓口を設置する。

 

学校では「いじめ」が大きな問題となっていますが、誤解を恐れずに表現すると、それが家庭や職場で行われているのが「ハラスメント」です。ストレス社会では避けて通れないこの問題を、一人でも多くの人が自分の問題として考えていく必要があります。

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