環境砂漠化の原因と日本の取り組み 鳥取砂丘についても解説

砂漠化の原因と日本の取り組み 鳥取砂丘についても解説

地球規模で起こっている土地の砂漠化現象が、私たちの生活に暗い影を落としています。砂漠化が起こる原因とそれを食い止めるために日本が行っている活動について、さらには砂丘との違いについて紹介します。

広がり続ける砂漠化

広がり続ける砂漠化

砂漠と砂漠化

地球上には、アフリカのサハラ砂漠、中国のタクラマカン砂漠、オーストラリアのグレートサンディ砂漠など、砂漠と言われている地域があります。

このような地域では雨が降ることはほとんどなく、降ったとしてもごくわずかのため乾燥量の方が上回り、土地が潤うことがありません。昼夜の気温差が激しく水が留まれない土地には植物も生息できず、人間が住むには過酷な環境となります。

これに対して、もともと草木も生えて人間が住めるような土地だった場所の植物が枯れて土地が乾燥し、土が劣化して植物が一切生えなくなってしまうことを「砂漠化」と言います。

ひび割れた大地と枯れた草木。テレビや漫画などで表現される「荒廃した世界」が現実となって地球上に現れ、私たちの生活に大きな影響を及ぼしているのです。

砂漠化の原因

砂漠化の原因は単純なものではありませんが、簡単に表現するならば「人間と地球とのバランスが大きく崩れたこと」にあると言えるでしょう。

人間ははるか昔から、地球上の植物や生物、石油や石炭といった地球に蓄えられた資源を利用して生活することで大きく発展をしてきました。燃やされた燃料からは二酸化炭素や大気汚染物質が排出され、地球の温暖化へとつながります。

また、歴史的発展を遂げた人間は多くの山林を開拓して居住区を広げ、植物を伐採して利用してきました。その結果、本来あったはずの自然の姿は消えて新たに人間の都合に合わせた植物の大量栽培・大量伐採が繰り返され、土壌の栄養素が枯渇していきました。

人間の生活によって大量に排出された大気汚染物質は大気に溶け込み、酸化した雨となって地球上に降り注ぎます。これが酸性雨です。酸性雨は自然や人間にさまざまな悪影響を及ぼす恐れがあります。森林を枯らし、土壌を汚染し、それらが流れ込む湖や沼、海に棲む生物や人間までもおびやかしているのです。

これら一連の流れが砂漠化の原因であると考えられ、それらは全て人間の行動が引き金となっています。

身近な環境問題の一つ「酸性雨」の原因と危険性 身近な環境問題の一つ「酸性雨」の原因と危険性

海の砂漠化

海中でも「生物が打撃を受けて育たない」という砂漠化現象が起こっています。これが顕著に表れているのが珊瑚の白化です。まるで白骨のように見える珊瑚は、立ち枯れを起こした森林にも似ています。

珊瑚は植物ではなく、クラゲやイソギンチャクといった腔腸動物の仲間です。何かを捕食して生きるのではなく、自分の体に褐虫藻(かっちゅうそう)という藻を宿らせ、褐虫藻が光合成を行った際に生み出す栄養素と酸素を取り込んで生きています。一方、珊瑚から出た二酸化炭素は褐虫藻へと供給され、バランスを保った共存状態となっています。

この褐虫藻の持つ色素が美しい珊瑚の色となっているのですが、地球の環境変化が大きく影響し、その美しいバランスを保つことができなくなってきました。海水温の上昇、流れ込む酸性雨、降り注ぐ紫外線の量の増加といったさまざまな問題が海中の生物に甚大な被害を及ぼし、生命力にあふれていた海を生物が死に絶えた海へと変えているのです。

 

砂漠化に対する日本の取り組み

砂漠化に対する日本の取り組み

深刻な環境変化による砂漠化に対して日本はどのような活動を行っているのでしょうか。

植林・緑化運動

砂漠化の要因のなかで最も大きい問題として取り上げられているのは森林の消失です。これまで日本では、失われた森林をもう一度取り戻すために植林と緑化活動を行ってきました。

具体的には、切り拓かれたまま放置されていた土地を植林で復活させることや、手を入れていない林の環境を整えることで森林保全をすることです。これによって山・人里・海へとつながる流れを作り、浄化を意識した環境作りを目指しています。

休耕田を復活させ、土地を蘇らせることで浄化を促すことも重要な活動です。植物が生えている土地にはさまざまな土中生物が集まり、肥沃で力のある土へと生まれ変わることができます。

昔ながらの自然のサイクルを実現し、人間が変えてしまった環境を人間の手により元へ戻すこと。それが現在の大きな課題となっています。

NGO活動の援助

砂漠化は日本だけでなく世界規模で起こっています。そして、その砂漠化を進める原因の一つとなった森林破壊には日本も加担することとなってしまいました。

安くて質の良い木材を求めた結果、日本は大量の木材を輸入に頼るようになり、木材を栽培していた諸外国において森林破壊が進みました。一度失われてしまった森は何十年という時間を掛けなければ取り戻すことができません。

このような状況を改善するため、企業や民間団体が主体となっているNGOが植林・緑化運動を世界各地で行っています。国はこれらの運動に対する支援をすることで活動を後押しし、日本だけではなく世界規模での植林・緑化運動を進める努力を続けています。

 

日本最大の砂丘「鳥取砂丘」

日本最大の砂丘「鳥取砂丘」

砂漠と砂丘の違い

「一面の砂地が広がる砂漠」というイメージは砂丘にも共通しますが、砂漠と砂丘には大きな違いがあります。

過酷な環境により砂漠となった土地とは違い、砂丘は「ほかの土地から運ばれた砂が溜まった場所」です。鳥取砂丘を例にとると、砂丘のある海岸は大きなすり鉢状の形をしており、そこに卓越風という風が内陸部へ向かって吹き込みます。

鳥取砂丘の砂の多くは内陸部の中国山地にある花崗岩が砂化したもので、これが海へと流れ着き、波によって打ち寄せられました。海から運ばれてきた砂が自然の影響により砂浜に溜まることで巨大な砂の丘を作り上げたのです。

鳥取砂丘が抱える問題

砂漠と違い生物の生息が可能な鳥取砂丘ですが、残念ながらここにも環境の変化による問題が現れました。

2000年代から続いている夏季の猛暑は防砂林に打撃を与え、砂丘の砂が道路を埋めるなどの被害が出ています。この防風林を復活させる計画も進んでいますが、植林したクロマツは成長が遅いために効果はあまり出ていない状況です。

また、鳥取砂丘には砂丘独特の植物・生物が生息しており、この生態系を破壊することになる防風林を人間の都合で広げるわけにはいきません。砂地でありながら生物が生息可能な鳥取砂丘は大変貴重で、観光地としてだけではなく砂漠の緑地化作業に関する研究を行ううえでも重要な拠点となっているからです。

人、生物、環境のバランスをいかに整えながら鳥取砂丘を守っていくのか、共存の道の模索は続いています。

観光名所としての鳥取砂丘

巨大な砂丘と美しい景観は人々を魅了し、鳥取砂丘は全国でも有名な観光名所となっています。吹き付ける強風を利用したパラグライダーやハングライダー、砂丘の傾斜を利用したサンドボードは選手権が開かれるほどに人気があるアウトドアスポーツです。

砂丘の周辺には観光施設が立ち並び、レストハウスや土産物店でにぎわっています。観光の一環として飼育されているラクダは、実際に乗って砂丘を遊覧することができる人気のアトラクションにもなっています。

鳥取砂丘名物の砂たまご

鳥取砂丘の特徴を活かして開発された「砂たまご」は、鳥取砂丘とともに生きる村人の発想から開発された特産品です。当時「福部村(ふくべそん)」と呼ばれていた地域に住んでいた村人が、水分を含んだ砂地が熱いことに注目。温泉たまごにヒントを得て、この砂地で蒸し焼きにした砂たまごを生み出しました。

福部村は合併を経て福部町となっていますが、その心は「ふくべむら特産品本舗」と名前を変えて受け継がれ、「砂たまご」とともに人々のなかに生き続けています。

 

環境のバランスが崩れてしまって起こった砂漠化は、すぐに元に戻ることはできません。しかし、昔から続いてきた「自然との共存」をいま一度思い出し、人間がその気持ちを忘れずに努力を続けていくことで、新たな共存関係を築ける可能性があるのでしょう。