地域おこしのゴールは「住民一人ひとりが元気になること」。町も元気に、自分も元気に。

地域おこしのゴールは「住民一人ひとりが元気になること」。町も元気に、自分も元気に。
国土のおよそ3分の2を森林が占める日本。その「森林大国」とも言える日本にあって、ここ兵庫県宍粟市はなんと市の面積の90%を森林が占め、県下の1,000mを超える高峰の3分の2を有するという雄大な自然をたたえる地です。兵庫県宍粟市では2015年から地域おこし協力隊の募集を開始し、現在は5名の隊員が活動しています。今回はその1期生である加藤智子さん(通称「かとパン」)に密着し、宍粟市での暮らしや隊員としての活動をレポートしていきます。

新規事業の立ち上げからスタートした協力隊の活動。前職の経験を生かし仕事の幅を広げられた2年

ー 協力隊員としての任期とミッションを教えてください。

加藤智子(以下「加藤」) 任期は3年です。2015年の9月からなので、あと1年を切りました。私が協力隊に応募したとき、ちょうど宍粟市が観光事業として「森林セラピー」を立ち上げている最中だったんです。なので、そのオープンの準備や新規事業の立ち上げに携わる形で協力隊の活動がスタートしました。

協力隊の業務は宍粟市の観光振興がメインです。今は森林セラピーのガイドとして、企業や視察の方が来られた際などに案内したりしています。

森林セラピーは、森のなかを歩いて深呼吸したり、寝転がってみたり、木や水に触れたりすることで眠っている五感を少しずつ覚醒させていくことを狙いとしたプログラムになっています。森林セラピーを行うのは「森林セラピー基地」という場所で、これは全国各地にありますが、兵庫県内で初めて基地に認定されたのが宍粟市なんです。

森林セラピーを立ち上げて2年目になりますが、今は他の観光資源と組み合わせた企画、例えば冬はスノーシューのツアーなどを検討しています。どうしても冬はイベントが少なくなるので、森林セラピー以外のことも色々と行っています。

具体的には、前職がスポーツクラブのインストラクターで運動指導をやっていきたいと思っていたので、今は宍粟市内で地域の人に運動を教えています。メニューはエアロビやヨガなど、ニーズに合わせて幅広く行います。市が開催する健康教室に講師として行くこともあって、それは協力隊の副業として認めていただいています。

焚火を囲んでの野外インタビュー
(焚火を囲んでの野外インタビュー)

ー 成果を出さなければいけないというプレッシャーはありますか?

加藤 全くないということはありませんが、観光振興活動の成果というのは短期的には目に見えにくいと感じています。例えば「宍粟市の特産品を作る」というミッションであれば成果物として「モノ」ができるし分かりやすいですが、それに比べると観光振興は短期的な効果測定が難しい。

同時に、私が思う地域おこしは「宍粟市に住む一人ひとりが元気になる」ということです。人が元気になって行動して何か新しいことをしたり、宍粟という町の魅力に改めて気付いてもらえたり、町全体がそういった状態になることが宍粟市の地域おこしのゴールだと思っています。運動指導を始めたのもそのような想いがあってのことですし、地域でイベントがあれば、できる限り顔を出して住民の方と日常的に交流するようにしています。

とにかく、協力隊員が何をしているのか分からない、という状態を作らないように特に気を配っています。

 

地域を知る。人を知る。そして自分もやってみる!

ー 恥ずかしながら私、「しそう」って読めなくて…

加藤 私も面接に行くまで宍粟市のことは全く知らなかったし、なんなら「あなぐり市」だと思っていました(笑)。でも、面接を受けて縁あってパスすることができたので、「行きます!」とすぐに返事をしました。

宍粟市には4つの町があって、私が住んでいるのはその内の「波賀町」という集落です。住まいが波賀町というのはこちらに来てはじめて分かったのですが、ご覧のとおり山しかない。最初は少しびっくりしましたが、今は「ここで良かったな」って思っています。

というのも、私が来ることに対して町のみなさんがウェルカムだったからです。最初だけワーッと盛り上がるだけかなとも思ったのですが、全くそんなことはなくて、みなさん本当に親切です。畑を始めたいと言えば機械を貸してくださったりと、何かと世話を焼いてもらっています。協力隊が終わってからもしばらくここに住み続けたいと思っています。

自分でとった鹿の毛皮で作った玄関マット
(自分で獲った鹿の毛皮で作った玄関マット)

ー 協力隊の活動で苦労したことはありますか?

加藤 自分では苦労という苦労は感じていません。ただ、協力隊の活動は、自分が何をするかを自分で見つけていかないと前に進まないことが少なからずあると思っています。研修などで他の地域の隊員の話を聞くのですが、何をすれば良いかうまく見つけられないことである種の「所在のなさ」を感じてしまって、そこで心が折れてしまう方も少なくないようです。

私も森林セラピーに関する業務に携わるとは聞いていましたが、最初のころは具体的にやることが決まっていない状態で、どうしたら良いかと悩んだこともありましたが、少し考え方を変えて「とにかくやってみよう」というモードに切り替えました。

森林セラピー以外にも観光協会の仕事や市役所の仕事など自分に手伝えることがあればそれをするようにしたり、とにかくまずはこの土地になじんでいけるように自分で考えて動き回ったりしたことで徐々に地域の人たちとの信頼関係も築けていったし、色々な仕事もいただけるようになったと思っています。

エアロビからヨガまで幅広くこなす。この日は体操指導
(エアロビからヨガまで幅広くこなす。この日は体操指導)

ー 地域の方との信頼関係を築くためにとった行動を具体的に教えてください。

加藤 地域の方がどのようなことをされているのか自分の目で見てみたいと思ったので、市役所の担当者に「こういうことに興味があるんですけど、誰か紹介してもらえますか?」と相談して繋いでもらい、会いに行きました。

多くの人のところに行きましたね、林業をしている方や狩猟をしている方など。「こんにちは~!」と訪ねていって、実際にチェーンソーを握って木を切らせてもらったりもしました。そこから地域の方との関係性を深めていくことができたので、とても良い出会いの場を与えていただいたと思います。

わな猟を始めたのも猟師の方にお会いしたのがきっかけです。市の広報誌の協力隊のページに狩猟の話を書くことがあるのですが、周りを見ても20代の女性で狩猟をしている人なんていないし、知り合いのお肉屋にお願いして解体までやってもらったりしていたら、ちょっとした噂になっているみたいなんです(笑)

知らないおじさんに「あんたそんなことやるんやってなぁ!」と話しかけられることもあります。狩猟のおかげで名前が広まってしまいましたが、逆に良かったかなと思っています。

ー 次回は猟に同行しても良いですか?

加藤 もちろんです。一緒に始めましょう!

加藤 智子(かとう ともこ)さん

終始笑顔でハキハキとインタビューに応じてくれた”かとパン”。その礼儀正しさと明るく元気で打てば響く話しぶりから地域の方が信頼を寄せていったことは想像に難くありません。彼女がモットーとしている積極的な行動は、いわゆる”ヨソモノ”がその土地の生活になじみ、うまく溶け込んでいく秘訣であるようにも感じました。

次回はかとパンのわな猟に同行させてもらい、狩猟女子の一面に迫るとともに猟の一部始終をレポートしたいと思います。

 

【プロフィール】

加藤 智子(かとう ともこ)
宍粟市地域おこし協力隊

1991年生まれ、京都府舞鶴市出身。スポーツクラブでのインストラクターの職を経て、2015年より宍粟市地域おこし協力隊員として活動中。

関連記事