日本の危機!外来種が引き起こすさまざまな問題

日本の危機!外来種が引き起こすさまざまな問題
2017年夏、日本国内で「ヒアリ」という小さな見慣れないアリが相次いで見つかり、大きなニュースになりました。ヒアリはもともと日本に見られない、海外から入ってきた生物です。このような生物を「外来種」と呼びますが、今回はさまざまな外来種が引き起こしている問題を見てみます。

外来種とは

外来種とは
(写真:photoAC)

外国から持ち込まれた「外来種」

日本には元々いなかったものの、人為的な何らかの理由によって外国から持ち込まれた生きものを「外来種」または「外来生物」と言います。これに対して、元々日本にいた生きものは「在来種」と呼ばれて区別されています。

日本は周囲を海で囲まれた島国で、外国とは隔絶されています。そのために日本独自の生態系が成立しており、日本でしか見られない生きものも数多くいます。しかし、この日本の生態系に対して外来種は脅威を与えています。

日本国内で確認される外来種は年々増加傾向にあります。背景にあるのは経済のグローバル化です。国際的な人やモノの流れが活発化した結果、多くの生きものが日本にも入ってきました。それらには意図的に持ち込まれたものもあれば、偶然入ってきてしまったものもあります。

日本にいる外来種は、判明しているだけでも2000種を超えると言われています。この数には、農作物や観賞用の植物、家畜やペットとして飼われている動物なども含まれます。すべての外来種が問題というわけではなく、私たちの生活と密接な関わりを持っているものも多いのです。

外来種被害予防3原則

外来種のなかには、日本の自然環境に適応して野外で繁殖し定着するようになり在来の生態系と共存している外来種もある一方、在来種の生息・生育を脅かし生態系を変えてしまいかねないものも多数あります。

そのような外来生物による被害を防ぐための原則として「外来生物予防3原則」があります。

1.入れない:悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない

・かわいいからと外国にいる動物を日本に持ち込むと、それが日本の生態系に影響を及ぼす可能性があります。

2.捨てない:飼育している外来生物を野外に捨てない

・野生化して在来種を捕食したり、人を攻撃するなどの影響を及ぼす場合があります(例:ウシガエル、カミツキガメ)。

3.拡げない:野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない

・捕獲するなどしてほかの場所に移すと、その場所の生態系に影響を与える場合があります(例:ブラックバス)。

 

侵略的な外来種の種類

侵略的な外来種の種類
(写真:pixabay)

外来種による被害を未然に防ぐため、国は「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称:外来生物法)」を制定しています。

この法律では、生態系に被害を及ぼす侵略的な外来種を「特定外来生物」として指定し、飼育・栽培・保管・運搬、販売・譲渡、輸入といった行為を原則禁止しています。特定外来生物には、2017年12月時点で合計132種が指定されています。

特定外来生物に指定されている侵略的な外来種をいくつか見てみましょう。

哺乳類

アライグマ

北アメリカ原産の小動物で、タヌキに似ていますが、目の周りからほおにかけての黒いマスク様の模様が特徴です。

1970年代後半にアライグマを主人公とするテレビアニメが放映され、ペットとして人気が高まったことで大量に輸入されました。しかし、大きくなるにつれて飼うことが難しくなるために、放されたり飼育施設から逃亡したりなどして全国各地で定着するようになりました。

1990年代半ばには一部の地域での確認にとどまっていましたが、2006年にはほぼ全国で確認されるようになりました。アライグマはさまざまな環境への適応力が高いこと、雑食であること、日本には天敵がいないことなどが急速に増えた理由と考えられます。

全国に広がるにつれ目立っているのが農林水産業への被害です。特に、トウモロコシ・スイカ・メロン・イチゴなどの野菜や果樹、家畜飼料への被害が多く、2012年度の全国での被害額は3億4千万円にも上りました。また、家屋の屋根裏に住み着くこともあり、神社仏閣等の文化財への被害も発生しています。

これ以上の被害を出さないために、捕獲や駆除などの取り組みが進められています。

両生類

ウシガエル

ウシガエルはアカガエル科に属する大型のカエルで、成長すると頭胴長は20cm近くにもなります。オスは「ウォーウォー」という牛に似た鳴き声を出すことからこの名が付けられました。

北アメリカ原産で日本には1918年に食用として持ち込まれ、それが逃げ出して日本全国に広まり、定着しています。

捕食性が強く、昆虫類やほかのカエルや魚など、口に入るものであればほとんど何でも食べます。小型の哺乳類や鳥類を襲って食べることもあるほどです。そのため、同じ環境に生息するトノサマガエルやダルマガエルなどが影響を受けています。

爬虫類

カミツキガメ

アメリカ大陸原産の大型のカメで、50cmほどにもなります。1960年代にペットとして輸入されたものが放されて広がったとされています。

福島県・新潟県より南で捕獲記録があり、千葉県と静岡県では定着しているほか、東京都でも公園の池などで定着の可能性が考えられています。

水草や水生昆虫・ザリガニ・魚・エビ・カニ・ヘビ・小型のカメなどのさまざまなものを食べるため、これらの生態系への影響が懸念されています。また、その名のとおり人に噛み付くこともあり、負傷者も出ています。

植物

アレチウリ

つる性の植物で、河川敷や造成地、畑地などに見られます。

北アメリカ原産で、日本では1952年に静岡県の清水港で北米からの輸入大豆に種子が混入しているのが初めて確認されました。その後、全国各地に広がっていきますが、トラックの荷台やタイヤに付着したり、工事で発生した残土に混入していたのが運ばれたりしたと考えられています。

河川敷のような日当たりの良い場所を好み、侵入すると短期間で広い範囲を覆ってしまいます。たくさんの葉を出して光を遮るため、その下に生えている草や木を枯らしてしまい、生態系をがらりと変えてしまうのです。繁殖力が強いため、一度侵入してしまうと駆除するのは困難です。

 

外来種が引き起こす問題

外来種が引き起こす問題
(写真:pixabay)

日本の生態系に脅威をもたらす外来種ですが、具体的にはどのような脅威があるのでしょうか。生態系、人体、農作物・水産物の3つの面から見てみましょう。

生態系への影響

繁殖力が強いために、絶え間なく増えて生息・生育範囲を拡大し、在来種からなる既存の生態系に影響を及ぼします。

具体的には、次のような例があります。

・在来種を捕食してしまう(例:アメリカザリガニ、ブラックバスなど)
・在来植物の生育地を奪ったり、枯らして駆逐してしまう(例:アレチウリ、セイタカアワダチソウなど)
・近縁の在来種と交雑して、雑種をつくる(例:セイヨウタンポポと在来タンポポ、オオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオなど)

人体への影響

毒を持っていたり凶暴なために、人を噛んだり刺したりすることで生命への影響を及ぼします(例:サソリ、カミツキガメ、タイワンハブなど)。

農作物・水産物への影響

農地に入って農作物を食い荒らしたり、養殖を行っている養魚場に侵入して魚類を捕食するなど、農業や水産業へ影響を及ぼします(例:アライグマなど)。

 

東京でも多くの被害を生む「ヒアリ」とは

東京でも多くの被害を生む「ヒアリ」とは
(写真:pixabay)

2017年6月、兵庫県尼崎市において中国から貨物船で運ばれたコンテナ内で国内初となるヒアリが確認されました。このコンテナが陸揚げされた神戸港において調査が行われたところ、コンテナヤードの舗装面の亀裂に巣が作られているのが確認されました。

その後、愛知県・大阪府・東京都などでも相次いでヒアリが見つかり、大きなニュースとなりました。小さなアリが、なぜこれほどまでに注目されたのでしょうか。

ヒアリの特徴・見分け方

ヒアリは南アメリカ原産で、体長は2.5mm~6mm程度と小さなアリです。体は主に赤茶色で、腹部は濃く黒っぽい赤色です。

尻に強い毒を持っており、毒針で刺されるとアレルギー反応を起こして死に至ることもあります。刺されると火傷のような激しい痛みを生じることから、漢字で「火蟻」、英語では”Fire Ant”と呼ばれています。

ヒアリの特徴として、土で「アリ塚(巣)」を作ることが挙げられます。ヒアリのアリ塚は直径25cm〜60cm、高さ15cm〜50cmにもなり、農地や公園などの開放的な草地や裸地に見られます。日本の在来種のアリには土で大きなアリ塚を作るものはいないため、これが見分けるポイントになります。

なお、在来種のアリでヒアリに似ているものとしては、以下のような種があります。

・ヒメアリ属:体長1.5mm〜3mm。触角のこん棒部分が3節に分かれている(ヒアリは2節)
・クシケアリ属:体長3mm〜5.5mm。胸の後背部にトゲがある。毒針を持ち、刺すことがある
・オオズアリ属:頭部が大きい兵アリがいる。刺さない

ヒアリの被害例

ヒアリは、世界では北アメリカや中国・フィリピン・台湾などの環太平洋諸国を中心に、世界約80ヵ国に広がっているものと見られています。

日本ではこれまで定着は確認されていませんでしたが、近隣の中国や台湾などでは定着しているため、侵入が警戒されていました。

ヒアリの侵入・定着で大きな被害を被っているのはアメリカです。アメリカでは、2017年9月時点で13の州での生息が確認されています。すでに定着してグラウンドや公園、農地などに広く生息しているため、年間延べ3,700万人もの人がヒアリに刺され、このうち125万人がアレルギー反応を起こして重症化する恐れがあったというデータもあります。

特に深刻なのは農業への被害です。ヒアリはオレンジなどの柑橘類や大豆を好み、食べ尽くしてしまうのです。ほかにも、鳥のひなや動物が食べられたり送電線が噛まれて漏電したりするなどの被害があり、被害額は年間7,000億円に上ると試算されています。

ヒアリはとても繁殖力が強く、1匹の女王アリが一生のうちに300万個もの卵を産みます。そのため、一度定着すると爆発的に増え、根絶が難しくなってしまいます。アメリカではすでに増えすぎてしまったために対策が追いつかず、完全な駆除は不可能とまで言われています。

一方、ニュージーランドでは侵入・定着がみられたものの、徹底的な駆除によって根絶に成功しています。その方法は、港で確認された時点で早期に通報し、駆除を行った後も2年間は継続して観察するという地道なものです。

これにより、過去3回ヒアリの侵入が確認されながら、定着を未然に防いでいます。

ヒアリを見つけたら

ヒアリは、日本でも定着すると大変な被害が出ると予想されています。海外との人やモノの行き来が活発になっている現在、ヒアリが入ってくるのを防ぐことは難しい状況です。

しかし、侵入しても定着させないことは可能です。ヒアリを発見した場合には、地元の自治体や環境省の地方環境事務所へ速やかに連絡しましょう。

特に、アリ塚を踏んでしまうとたくさんのヒアリが一斉に攻撃してくるので、絶対に避けなければなりません。

多くの人がヒアリについて正しく知り、気付いた時点で速やかに対処することが必要です。

 

外来種の中には、私たちの生活と深い関わりがあり、役に立っているものも多くあります。例えば米も、元々は海外から持ち込まれた外来種なのです。外来種だからと言ってむやみに恐れることはありません。

身近の自然に関心を持って、身の回りにある生きものがどこから来たのかを考えてみましょう。

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