歴史ある日本の伝統工芸宮城伝統こけしの特徴と歴史|鳴子漆器と木地玩具のコラボもご紹介

宮城の伝統品「鳴子漆器」と「木地玩具」が手を取り誕生した新ブランドの正体とは!

古くから鳴子温泉郷でにぎわい、伝統工芸の文化を育んできた宮城県大崎市鳴子地区。そんな鳴子の伝統品である鳴子漆器と宮城伝統こけしで有名な木地玩具が新ブランドを立ち上げました。そこで、このコラボと合わせて宮城伝統こけしの特徴と歴史も紹介します。

鳴子漆器の特徴

鳴子漆器とは

「鳴子漆器」は宮城県大崎市の旧鳴子町で作られている伝統工芸品です。鳴子町は2006年に近隣市町村と広域合併して大崎市となりました。旧鳴子町は宮城県の北西で秋田県と山形県に接する場所に位置し、町の大部分を森林が占める山間地域です。

また、県内で唯一、豪雪地帯対策特別措置法に基づき指定される「特別豪雪地帯」となっています。

自然豊かな鳴子には1000年以上の歴史を誇る鳴子温泉郷があり、古くから湯治客が数多く訪れています。外部との交流が盛んだったこともあり、文化的に発達した場所でもあります。そのような風土のなかでこけしや漆器といった伝統工芸が生まれ、土地に深く根付き今に伝え継がれています。

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鳴子漆器の起源

鳴子漆器の始まりは1624年〜1643年ごろと言われています。鳴子漆器は美しい漆器でありながらも派手過ぎず素朴で温かみあるところが根強い人気となっていますが、その基礎を築いたのが伊達敏親でした。

敏親は岩出山伊達氏の第3代当主を務め、現在の大崎市にあたる陸奥国玉造郡を支配していました。そして1661年〜1672年ごろ、当時すでに誕生していた鳴子漆器の振興を目的に、塗り師や蒔絵師を京都に派遣して技術の向上を図ります。技術が確立されたことで名実ともに定着していった鳴子漆器、その最盛期は1900年代前半だったと言われています。

その後も止まることなく鳴子独自の技術が発展していったことで評価を上げ、1991年には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に基づき、経済産業大臣によって指定される経済産業大臣指定伝統的工芸品に選ばれています。

塗立技術や耐久性が評価

鳴子漆器の大きな特徴は「塗立技術」にあります。

  • 生漆を塗り重ねた上に透明な漆を塗って素朴に木目を透かせる「木地呂漆塗り」
  • 生漆を塗って拭き取りを繰り返して刷り込み木目や木肌を引き立たせる「拭き漆塗り」
  • 1951年に鳴子出身で漆工芸の研究をしていた澤口悟一が考案した、墨をにじませたような模様を出す鳴子独自の「龍紋塗り」

などさまざまな技術が伝承されています。

見た目の美しさや漆器ならではの耐久性が評価されています。

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宮城伝統こけしの特徴

宮城伝統こけしの特徴

鳴子での木地玩具の歴史

1900年代初頭ごろまで、良質な木材を求めて山を転々と移り住みながら生活する集団が存在していました。彼らは、良質な木をろくろと長細く先が鋭利なカンナを使って、皿や盆・椀・玩具などを作って生活の糧としていました。

彼らは「木地師」や「木地職人」と呼ばれ、作られていた玩具のことを「木地玩具」と言い、丸みを帯びた温もりを感じられる形をしています。

こうして古くから温泉地として名高い鳴子では湯治客へのお土産としての木地玩具が発達してきました。なかでも、布物の人形が高価で手に入りにくかった東北では、こけしは木地玩具の人形として広く普及していきました。

宮城伝統こけしの歴史

何度もブームを巻き起こしたり、コレクターが存在したりと根強い人気を誇るこけし。その歴史は古く、1850年ごろに東北の温泉地で湯治客を対象としたお土産として誕生したと言われています。その当時からの製造様式を守りながら作られるこけしは「伝統こけし」と呼ばれています。

青森県から福島県までの東北の各地、特に温泉街に伝統こけしの産地はありますが、宮城県はとりわけその数が多いことで有名です。産地として主なのは仙台市・白石市・大崎市(鳴子)・蔵王町(遠刈田)・七ヶ宿町・川崎町・松島町となっています。

宮城には約半数の伝統こけしの系統が存在

また、伝統こけしはその特徴ごとに11もの系統に分かれており、宮城にはそのうちの5系統が存在します。

  • 作並温泉を中心に作られる、胴が細いことが特徴の「作並系」
  • 白石市の弥治郎集落を中心に作られる、頭にカラフルな輪が数本描かれていることが特徴の「弥治郎系」
  • 最も古いこけし産地と言われ、頭が大きく胴の真ん中にかけて少しくびれた安定感のある形状と首を回すと「きゅっきゅっ」と音が鳴ることが特徴の「鳴子系」
  • 遠刈田温泉を中心に作られる、頭に赤い放射線状の飾りが描かれることが特徴の「遠刈田系」
  • 遠刈田と鳴子の系統の亜流として誕生した、肘折温泉を中心に作られる色彩の強さと顔の個性が特徴の「肘折系」

これらが総称として「宮城伝統こけし」と呼ばれるものです。

1981年に宮城伝統こけしは、鳴子漆器(1991年に指定)と同様に経済産業大臣指定伝統工芸品に指定されています。同じ地域で二品も伝統工芸品に指定されている場所は全国的に見てもまれ。宮城伝統こけしの中でも「鳴子温泉と言えばこけし」とされるほど「鳴子系」は名が知れわたっています。

 

鳴子漆器と木地玩具が融合した新ブランド「NARUKO」

鳴子漆器と木地玩具が融合した新ブランド「NARUKO」

「NARUKO」とは

鳴子漆器と木地玩具、この二つが融合した新ブランドが誕生しました。その名は「NARUKO」。異なる二つの伝統工芸品がなぜ手を取り合うことになったのでしょう。

鳴子漆器と木地玩具という鳴子ならではの著名な伝統工芸品もほかの伝統工芸品と同様に世の流れには逆らえず、販路の縮小と後継者不足という問題を抱え、下降の一途をたどっていました。その現状に危機感を覚え、鳴子にある二つの伝統工芸を現代風に新しくデザインして「NARUKO」ブランドとして発信していこうと「NARUKOプロジェクト」が立ち上がります。

そして2007年には、経済産業省が世界に通用するブランドの確立を目指す取り組みに対する補助を行う「JAPANブランド育成支援事業」に採択されました。

厳しい自然環境のなかで昔からその自然と共生しながら生活している鳴子は、ロハス(持続可能で健康的な生活)を表現しているということや、漆器や木地玩具は自然素材を扱う商品であることから、当時フランスを中心に流行していたロハスの考え方をベースにし、漆器と玩具の持つ「遊び」の融合とオーガニックなイメージをコンセプトに取り入れました。

ターゲットは、ロハスを日常に取り入れようとしている人。奇をてらい過ぎずにほどよく個性的で、日常に馴染みながらも主張のある、長い間使い続けられるような商品を目指しました。

文化やコンセプトをネーミングにするという方向もありましたが、この「鳴子」という土地そのものがコンセプトを表現しているということや、世界を視野に入れたブランドにしたいということから、欧文体で「NARUKO」というネーミングになりました。

こけしの胴を思わせる色使いも魅力

商品製作にあたっては、宮城教育大学の桂雅彦教授がデザインし、木地職人が木地を作り、漆職人が漆を塗り、こけし職人が絵を描くという形をとっています。

種類は豊富で、コーヒーテーブル・キャンドルスタンド・キャンドルホルダー・花瓶・コンポート・トレイ・ボウル・ワインクーラー・テーブルランプなど伝統と新しさが融合した遊び心のある作品が鳴子の温泉旅館やこけし店などを通じて販売されています。

どれも職人による手作りで、なめらかな曲線美と漆の豪華さ、こけしの胴を思わせる色使いが現代的な家具と魅力的に掛け合わされています。

 

販路の縮小や後継者問題によって伝統技術が途絶えてしまう恐れもあった鳴子漆器と木地玩具。その二つが融合した新たな取り組みは、海外へ進出するほどの人気を集めています。

2009年の始めにはジャパンブランドエキシビジョンのニューヨーク展とパリ展に展示、2010年に世界最大級の国際見本市であるメゾン・エ・オブジェに出展、2011年にはサンフランシスコの震災復興にも参加しています。アメリカを中心に海外からの評価が高く、今後の展開が楽しみなところです。