食品・食材温州ミカンってどこの名産品?育て方は?さまざまな疑問に徹底解説

温州ミカンってどこの名産品?育て方は?さまざまな疑問に徹底解説

こたつに入って食べるみかんは格別ですよね。こたつの真ん中で山盛りになっているみかんは寒い時期の一家団らんにお馴染みの風景でしょう。ナイフがなくても簡単に手で皮をむくことができるのが、昔から日本人の身近にあった理由の一つとも言われています。一般的なみかんは、正式には「温州みかん」と呼ばれるものです。

温州みかんの品種

温州みかんの品種

温州ってどこ?

「オンシュウ」ではなく「ウンシュウ」と読むのは、柑橘の名産地であった中国浙江省(せっこうしょう)にある都市「温州(ウンシュウ)」に由来しています。温州は南側に福建省、東側に東シナ海が面している土地で、古くから港も栄えていました。

中国の名産地である温州にちなんで名づけられた温州みかんですが、農学博士である田中長三郎の調査によって、日本の温州みかんは温州原産ではなく、不知火海(八代海)沿岸の鹿児島県長島(現在の鹿児島県出水郡長島町)が原生地という説が有力になりました。

温州みかんとは

温州みかんはミカン科ミカン属の植物で、スーパーマーケットなどで目にする「有田みかん」や「青島みかん」「愛媛みかん」というのは全て温州みかんのブランド名です。

主な産地は和歌山県・愛媛県・静岡県。9月から2月ごろに多く出回るようになります。温暖で日当たり・風当たり・水はけが良い斜面が栽培に適しているので、主な産地のほとんどは太平洋や瀬戸内海に面した沿岸地です。

昔から日本の家庭では最も消費量の多い果物でしたが、近年の調査では一世帯あたりの消費量はバナナやりんごに抜かれて3位となっています。

栄養面を見てみると、温州みかんにはビタミンCが多く含まれ、みかん2個で1日に必要なビタミンCを摂取することができます。また、クエン酸は1個で1日の必要量を含んでおり、体内の酸性物質を減少させて疲労回復に役立ちます。

また、温州みかんにはほかの柑橘類にはない「シネフィリン」という成分が含まれています。シネフィリンは気管支を緩める効果があるので、のどからくる風邪の予防に有効と言われています。さらに、ミカンをたくさん食べる人は生活習慣病の発症リスクが低くなるという研究結果も発表されています。

温州ミカンの品種

温州みかんには多くの品種がありますが、果実の熟期ごとに以下のように分類されています。

極早生(ごくわせ)種9月~10月
早生(わせ)種10月~12月
中生(なかて)種11月下旬~12月下旬
晩生(おくて)種12月下旬~3月

極早生は皮が緑色で酸味が強めなので甘酸っぱい味わいです。主な品種には佐賀県で生まれた「大浦早生」や、宮崎県産の「日南1号」などがあります。

早生は甘みとほどよい酸味のバランスが特徴です。なかでも「宮川早生」は糖度の高さと風味に優れていることで有名。福岡県で誕生し、全国的に栽培されるようになりました。

中生の特徴は酸味が少なく甘みが強いことです。皮は濃いオレンジ色で、代表的な品種には愛媛県宇和島で生まれた「南柑20号」や、和歌山県で生まれた「向山温州」などがあります。

温州みかんシーズンの最後は晩生です。1か月ほど甘みを強めるために貯蔵してから出荷され、ほどよい酸味とコクのある甘さが特徴。静岡県で生まれた「青島温州」は果実が大きく、特に甘みが強いことで有名です。

 

温州みかんの育て方

温州みかんの育て方

植え付け

温州みかんは柑橘系の中でも比較的寒さに強いので、初心者でも家庭栽培に挑戦しやすく人気があります。秋から翌春にかけて1年生~2年生の接ぎ木苗が販売されています。植えつけに適した時期は3月中旬~4月中旬です。

植える場所は日当たりと水はけが良く、風当たりがあまり強くない場所を選びます。直径と深さ50cmくらいの穴に、掘りあげた土5:腐葉土3:赤玉土(小粒)2の割合で土を混ぜ、肥料を土に加えます。穴の深さの1/2くらいの高さまで土を戻したら、苗木の根鉢を崩して根を広げてから植えます。

ポイント
接ぎ木の部分が埋まらないように浅植えにすること。苗木の高さの50cm程度まで切り詰め、支柱を添えてひもで留めます。そして最後に十分に水やりをします。

水やり・肥料

柑橘類の栽培においては、春から夏の果実の成長期に水切れすると落果や落葉の原因になります。植えつけの後や夏の乾燥している時にはたっぷりと水やりを行うことが必要です。一方で成熟期の10月~12月には、土を乾かし気味にした方が果実の色づきが早くなり、甘い果実ができます。

肥料は、元肥として2月から3月に施し、追肥として9月から10月に油かすや化成肥料を施します。肥料の量は木が大きくになるにつれて徐々に増やします。弱っている時は液体肥料が効果的で、薄めたものを株全体にかけます。

整枝・剪定

整枝・剪定は2月から3月に行います。3年目程度までの苗木は、病害虫の被害にあった枝や、前の年の秋に伸びた枝、充実していない枝などを切って樹の内側に日光が当たるように側枝を開くようにします。樹形ができあがった4年目以降の木は、主に間引き剪定を中心に行います。

ポイント
温州みかんは、果実をたくさんつけすぎると隔年結果(果実がたくさんなる年と、少ししかならない年とが交互に現れること)になったり、栄養が分散して実が甘く熟さなくなったりするので、7月中旬から8月中旬に摘果作業(間引き)を行います。こうして実の数を制限するのがおいしい温州みかんを栽培するポイントです。

 

温州みかんの種類

温州みかんの種類

有田みかん(ありだみかん)

有田みかんは和歌山県で生産されているみかんの代表的なブランドで、全国的に有名な高級みかんとして百貨店や高級フルーツ店にも並んでいます。

日本一のみかんの産地である和歌山県の有田地方では昔からみかん栽培が盛んでした。紀州藩の委託を受けた伊藤孫右衛門が、現在の有田市糸我町中番にあたる場所で栽培を始めたのが始まりとされ、有田市・有田郡有田川町・有田郡湯浅町・有田郡広川町を中心に栽培されています。

一年を通じて温暖で昼夜の温度差が少ない環境はみかん栽培にうってつけで、豊富な日照量と水はけの良さや浅い土壌がおいしい有田みかんを育てています。

西宇和みかん

西宇和みかんは「JAにしうわ」が管轄している愛媛県八幡浜市、伊方町、西予市三瓶地区で作られているみかんの総称です。明治時代から痩せた土地を開墾し、日照量が多く水はけの良い土地を利用して、戦後はみかん産地として発展してきました。

みかん作りに適した海岸沿いの南向き・西向きの急斜面という条件が、品質の良いみかんを育てます。西宇和みかんの中にも「豪琉頭日の丸千両」「日の丸千両」「百年蜜柑」などのブランド品があり、高級品として流通しています。

三ヶ日みかん

三ヶ日みかんは静岡県浜松市北区三ヶ日産の温州みかんです。三ヶ日は特に青島みかんが多く生産され、興津早生や宮川早生も栽培されている静岡県内最大の産地です。

浜名湖北部の南向き斜面の丘陵地は降水量が少なく日射量が多い排水性の良い土地で、おいしいみかん作りに適しています。「ミカちゃん」という女の子がトレードマークで、通常より長期間樹上で熟成させることで濃厚な味に仕上げた「ミカエース」などの高級ブランドもあります。

 

ミカンでよく聞く「じょうのう」と「砂じょう」とは

ミカンでよく聞く「じょうのう」と「砂じょう」とは

オレンジ色をしたみかんの外側の皮をむくと、次は白くて房になった薄い皮が出てきます。この一つずつの薄い皮を「じょうのう」といいます。小袋や薄皮とも呼ばれ、漢字では「瓤嚢」と書きます。おいしい温州みかんの条件の一つに「じょうのうが10個以上ある」というものもあります。

じょうのうにはペクチンやポリフェノールの一種であるヘスペリジンや食物繊維といった栄養素が含まれており、整腸作用や抗酸化作用が望めます。できるだけ果肉と一緒にじょうのうも食べるのがおすすめです。

「砂じょう」は、じょうのうの中の果肉にあたる部分です。果肉をよく見てみると、小さなみかんの粒がたくさん集まってできています。この小さいつぶつぶが砂じょうで、漢字では「砂瓤」と書き、砂のう(サノウ)とも呼ばれます。砂じょうの入ったつぶつぶのオレンジジュースもおいしいですよね。